月では表側の海の上に”マスコン”と呼ばれる強い正の重力異常があることを発見されている.マスコンは,衝突盆地の地下に巨大な密度異常が存在していることを意味すると同時に,その密度異常が完全なアイソスタシーに達していないことを示唆している.マスコン盆地の補償メカニズムはまだ十分に理解されていない.マスコン盆地以外にも月には多くの衝突盆地がある.従来の研究の最大の問題点は,月全球の重力場モデルが無かったことである.「かぐや」は月裏側に回り込んだ主衛星の軌道を追跡するために,リレー衛星(通称「おきな」)とよばれる小型衛星を月周回軌道で分離し,測距信号を中継させることで世界で初めて月裏側の4-way 観測を成功させた.新たな観測から導き出された月の重力場モデルは月の二分性や内部構造を探るための貴重な情報を提供している.