抄録
シャーゴッタイトは、火星隕石最大のグループである。
本研究では、Enrichedな化学的特徴を持つシャーゴッタイトに注目し、これらの隕石において、親マグマと考えられる隕石のバルク組成を元に結晶化過程の考察を行った。
Enrichedな化学的特徴を持つシャーゴッタイト9個を試料として用いた。このなかで、バルク組成が親マグマと一致していると考えられる隕石のバルク組成を出発物質とし、MELTSを用いてシミュレーションを行い、結晶化過程を考察した。
この結果、今回用いた4種類の出発物質全てにおいて、1110~1140度の残液の組成が、バルク組成が親マグマと一致していると考えられる2つの隕石とよく一致した。また、これらの残液から取り除かれる輝石組成が1140度以下の際に、集積岩の特徴を持つ玄武岩質シャーゴッタイトの輝石組成と似た値を示すことも明らかになった。
これらの結果から、Enrichedなシャーゴッタイトは、一連のマグマの活動からできた可能性が考えられる。