日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2010年年会
選択された号の論文の258件中1~50を表示しています
S1:サブダクションファクトリー
  • 巽 好幸, 鈴木 敏弘, 羽生 毅, 広瀬 敬, 大石 泰生
    セッションID: S1-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    玄武岩質の初期島弧地殻から安山岩質の大陸地殻が作られると、必然的にマフィックな「反大陸地殻」(融解残査)が生産される。高圧実験の結果、反大陸地殻は全マントル領域で周囲の物質より高密度であることが示された。現存する大陸地殻量から推定すると、反大陸地殻はマントル最下部に灼250kmの層を形成する。これはD"に相当する。大陸地殻の平均的化学組成に基づいて、反大陸地殻の同位体比進化を検討すると、約30億年前から生成・貯蔵されてきた反大陸地殻が上昇過程でマントル物質を取り込むことで、マントルプルーム起源物質である地球化学的貯蔵庫の1つ(EM1)の特性を再現することが判った。大陸地殻の形成と反大陸地殻の集積は、サブダクションファクトリーの重要な仕事である。
  • 溝淵 文彦, 栗谷 豪, 吉田 武義, 常 青, 木村 純一, 宮本 毅, 長橋 良隆, 谷口 宏充
    セッションID: S1-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    中国北東部では大陸プレート内部火成活動が活発であり、マントル遷移層に停滞する沈み込んだ太平洋スラブとの関わりが示唆されている。高圧実験や電気伝導度などの研究からは、停滞スラブ直上のマントルは水に富んでいる可能性が示唆されているが、その具体的な量は見積もられていない。そこで本研究では、中国北東部・龍湾産のアルカリ玄武岩マグマの生成条件を求めることにより、マグマ生成に必要なマントルの含水量を見積もることを目的とする。 熱力学的制約やREE組成などから求めたマグマ生成時の温度・圧力条件は1300~1310℃、深さ75~100kmであり、Adiabat_1phから計算した含水ソリダスによると、中国北東部下の上部マントルは220~600ppm程度の水を含むことが見積もられた。
  • 平野 直人
    セッションID: S1-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    海洋プレートが沈み込む手前で活動するプチスポット火山は、様々な海域で活動している。そのような沈み込む手前のプレート上のプチスポット火山体は、沈み込むプレート本体の海洋地殻や、海山等の古い火山体よりも選択的に陸側に付加されていることが容易に想像できる。
  • 吉田 武義
    セッションID: S1-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    新生代、東北本州弧における火山活動は、陸弧火山活動期、背弧火山活動期、そして島弧火山活動期に3分される。後期新生代、東北本州弧における火成活動史と構造発達史について、最近の成果をレビューし、東北本州弧の地殻構造が、これらの各期における火成活動、構造発達史と密接な関連を有していることを示す。
  • 永尾 隆志
    セッションID: S1-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    九州の後期新生代火山活動の特徴や火山岩の化学的性質は,過去から現在まで九州が経験してきた様々なテクトニック・イベントを反映して極めて複雑である。・九州全域で輝石安山岩からなる広大な溶岩台地(“洪水安山岩”)が形成され,その化学的特徴は島弧火山岩の特徴を持ち主成分元素のみならず希土類を含む微量元素組成までもが非常に類似している。 ・南部九州では海溝側から背弧に向かってプレート内アルカリ玄武岩,プレート内ソレアイト,島弧玄武岩の順に配列する。 ・火山活動がおこった当時,プレートの沈み込みの影響がなかったとされている地域で,プレート内玄武岩と高マグネシア安山岩,プレート内玄武岩と島弧ソレアイトが共存する。 ・スラブが到達していないと考えられている背弧側でのアダカイト質岩の活動。 ・海溝側でNbの負の異常を示さない安山岩が活動したり,火山フロント上で,プレート内アルカリ玄武岩が活動している。 ・島弧安山岩の2倍以上の軽希土類元素が濃集した安山岩の存在,などである。
  • 石渡 明, Ayalew Dereje
    セッションID: S1-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    小論では,構造環境が顕著に異なる3つの地域,即ちエチオピアの大陸リフト帯,日本海拡大初期の日本陸弧,そして伊豆海洋性島弧の流紋岩の化学組成を比較検討した.エチオピアと日本の陸弧の流紋岩は,地殻の年代や組成が大きく異なるにもかかわらず,一部の沈み込み帯特有の性質を除き化学組成がよく類似する.大陸リフト帯と日本海拡大に関連した日本陸弧の流紋岩はマントルプルーム起源玄武岩マグマの結晶分化作用で形成され,伊豆弧の流紋岩は若い苦鉄質地殻の部分溶融によって形成されたものと考えられる.
  • 柴田 知之, 三好 雅也
    セッションID: S1-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    国東半島中心部に位置する両子山火山の主要元素・微量元素組成とSr・Nd・Pb同位体組成の分析を行った。その結果,両子山の初生的なマグマは,沈み込むスラブが部分溶融してできた珪長質なマグマであと考えることが可能であることが分かった。
  • 土谷 信高
    セッションID: S1-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    沈み込み帯の火成岩類の成因には,沈み込んだ海洋地殻由来の成分(スラブ由来成分)が重要な役割を果たしていると考えられる.その場合のスラブ由来成分は,それぞれの沈み込み帯の条件によって様々な性質を示すはずである.本研究では,海嶺沈み込みによって形成されたと考えられる北上山地の前期白亜紀火成岩類と,海嶺拡大直後の沈み込みによって形成されたと考えられるオマーンオフィオライト中の後期火成岩類を例として取り上げ,それらに認められる沈み込み成分の特徴について議論した.その結果,北上山地の前期白亜紀火成岩類では,高圧下でのスラブメルティングによって形成されたアダカイト質メルトが重要な役割を果たしたと考えられる.一方,オマーンオフィオライト中の後期火成活動では,沈み込みの開始に伴って低圧下でスラブメルティングが起こった可能性が考えられる.
  • 山口 佳昭
    セッションID: S1-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    東北―中部日本の島弧火山のカンラン石斑晶メルト包有物には硫化物が含まれ,初生マフィックマグマが早期に硫化物を析出してイオウを分別することが示される.早期の未分化のマグマが捕獲されたメルト包有物ではイオウ濃度が高く(> 3000 ppm),初生的な高いイオウ濃度を記録していると期待できる.
  • 吉村 俊平, 中村 美千彦
    セッションID: S1-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    メルト包有物のH2O–CO2濃度分析から,地殻のマグマには深部起源のCO2流体が供給され,相互作用を起こしていることがわかってきた.このCO2輸送現象は“CO2フラクシング(fluxing)”と呼ばれ,現在,多くの火山で普遍的に起きている可能性が示されつつある.しかし,その具体的なメカニズム(CO2流量・時間・流動様式など)はほとんど理解されていない.本研究では,CO2フラクシングをシンプルな反応輸送過程としてモデル化し,数値シミュレーションを行うことで,その基本的な性質を解明しようとした.その結果,トータルで流れたCO2流体の質量と再平衡化時間の間に一定の関係があることがわかった.これと天然のメルト包有物のデータを組み合わせることで,CO2流体の流れの様式に制約を与えることが可能で,たとえばエトナ火山では,CO2流速は10-4 m/s程度と見積もられる.
  • 中川 光弘, 若佐 寛子, 武田 研太郎
    セッションID: S1-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    大規模な噴火を起こすカルデラ火山では,大量の均質な珪長質マグマが存在すると考えられている。しかしながら、規模の大きな火砕噴火では珪長質マグマが複数共存する例がある。支笏カルデラでは、珪長質マグマとして流紋岩~デイサイトの3種類以上が存在し,それに加えてマフィックマグマとして玄武岩質安山岩マグマが存在した。摩周火山の火砕噴火期では、流紋岩質とデイサイト質という2種の珪長質マグマが同時に活動している。支笏および摩周の場合、珪長質マグマはSr同位体比でも明瞭に区別でき、両者は結晶分化の関係にはない。珪長質マグマの成因として、玄武岩質マグマを熱源とした地殻の部分溶融が想定されている。この場合、地殻物質の不均質性から、同位体比の異なる地殻物質が同時に溶融することが考えられる。このプロセスは大規模な溶融の場合に特に顕著であることが想定でき、カルデラ形成のような噴火では、普遍的な現象かもしれない。
  • 長谷川 健, 松本 亜希子, 中川 光弘
    セッションID: S1-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    北海道東部の屈斜路火山における最大規模カルデラ形成噴火(KpIV)の推移を明らかにするため,野外調査と本質物質の岩石学的検討を行った.KpIVは,降下軽石(Pfa)とそれを覆う軽石流堆積物(Pfl)およびスコリア流堆積物(Sfl)からなる.Pfaの分布域は極めて小さく層厚も薄い.Pflはカルデラ周縁に分布するが,分布域の北西と南東側で岩相が異なり,北西側にのみ少量のスコリアが含まれる.Sflは,Pflの上位に侵食面を介し,北北東方向に限って認められる.PflとSfl中のスコリアはそれぞれ化学組成が異なる. KpIVの噴火推移は以下の通りである.Pfaを供給した噴煙柱は不安定で,噴火後すぐに火砕流が発生した.Pflの火口は北西と南東側に存在し,それぞれのPflは地形に制御されて流下した.最後期には,それまで優勢であった白色軽石が減少し,スコリアを大量に含むSflが,北北東方向のみに流れて噴火が終息した.スコリアを供給したマグマは北西火口側に偏って注入した.
  • 三好 雅也, 柴田 知之, 長谷中 利昭
    セッションID: S1-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    阿蘇火山中央火口丘群に分布する複数の後カルデラ期噴出物試料について地球化学的特徴を示し,Aso-4火砕流堆積物の報告値との比較を試みる.後カルデラ期火山噴出物のうち,両輝石流紋岩,黒雲母両輝石流紋岩,両輝石デイサイト,無斑晶質両輝石安山岩,斑状両輝石安山岩,かんらん石両輝石玄武岩の微量元素およびSr-Nd-Pb同位体組成分析を行った.それら分析結果は,後カルデラ期に活動した多様なマグマが,微量元素組成が類似し同位体組成が異なる2つ以上のソースに由来する可能性を示す.後カルデラ期噴出物とAso-4火砕流堆積物の微量元素パターンはほぼ一致する.しかし,Aso-4火砕流堆積物の同位体組成が比較的均質であるのに対し,後カルデラ期噴出物のそれは幅広く,不均質である.上記結果は,後カルデラ期マグマが,Aso-4噴火後の残存マグマではなく,カルデラ形成後に新たに生成されたマグマである可能性を示す.
  • 新村 太郎, 荒川 洋二, 三好 雅也, 柴田 知之
    セッションID: S1-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    阿蘇周辺地域に分布する先カルデラ期から後カルデラ期の火山岩を採取し,Sr, Nd同位体比および全岩化学組成の測定を行った.SrおよびNd同位体比のダイアグラム上において,前期先カルデラ期の噴出物の同位体比はSr比・Nd比が0.7040・0.51285(成分A)と0.7044・0.51270(成分B)付近の2つの領域に分かれる.後期先カルデラ期および後カルデラ期ではこれらの2つの領域の間にばらついた分布をする.間およびカルデラ期ではこれらの間の狭い領域に分布する.後期先カルデラ期以降の火山岩を作ったマグマは,前期先カルデラ期の2成分を作った物質が端成分となった,もしくはSr比が低い成分Aを作った物質に地殻物質が関与したと考えられる.また,間カルデラ期を含むカルデラ期と後カルデラ期の地球化学的特徴が大きく異なることから,後カルデラ期のマグマ形成プロセスはカルデラ期とは異なっている.
  • 小林 哲夫
    セッションID: S1-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    鬼界カルデラのアカホヤ噴火(7.3 cal ka BP)では,大規模噴火に付随して生じた地学現象(地震に伴う諸現象・小規模噴火)の地質学的な証拠とテフラとの関係を調べ,噴火プロセスに時間軸を入れることができた.カルデラ噴火を考える上で重要な点は,カルデラ噴火の前に長期の休止期が存在するとは限らず,噴火前には珪長質マグマと他組成のマグマが共存していたことである. 姶良カルデラの現状は,アカホヤ噴火の前の数千年間の状況と酷似する.鬼界カルデラのモデルを考慮すると,主マグマ溜りには珪長質マグマが蓄積中で,安山岩質マグマは主マグマ溜りの周囲をすり抜け噴出していると考えざるをえない.カルデラ周辺の最近の地盤変動のパターンから,桜島火山の噴火とは関係なく,カルデラ深部では珪長質マグマが蓄積され続けており,現時点で数10 km3程度のマグマが蓄積されているものと推定された.
  • 奥村 聡, 中村 美千彦, 土`山 明, 中野 司, 竹内 晋吾, 上杉 健太朗
    セッションID: S1-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    火山噴火の様式や強度の多様性を支配する要因の一つは,マグマからの開放系脱ガスである.島弧の珪長質マグマ中では,個々の気泡の移動がマグマそのものの上昇よりも遥かに遅い.そのため,地殻浅部における脱ガスは,連結して形成された気泡ネットワークや流動に伴うマグマの脆性破壊によって形成されたフラクチャーを通したガス浸透流によって引き起こされる.しかし,気泡ネットワークやフラクチャーの形成条件と, それらを含むマグマの脱ガス効率について定量的に示した研究はほとんど行われていない.我々は気泡ネットワークやフラクチャーの形成プロセスを実験的に再現し,組織の観察とガス浸透率の測定を行ってきた. 気泡ネットワークはマグマの流動と発泡度の増加に伴って形成された.それに伴いガス浸透率も上昇した.さらに,マグマの脱水が進むと(数百m程度の深度),流動に伴う脆性破壊が起こり,浸透的なフラクチャーが形成されることが分かった.これまでに明らかにされた,ガス浸透率を支配する主な要因はマグマの歪量と含水量である.これらはマグマ溜まり深度や火道径によって決定づけられているため,それらが噴火の様式や強度を支配している可能性がある.
  • 佐藤 博明, 藤田 奈穂, 御堂丸 直樹, 徳永 有亮, 石橋 秀巳
    セッションID: S1-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    サブダクションファクトリーで生じる玄武岩質マグマの上昇・噴火過程の例を述べる.新富士火山の玄武岩質噴出物について,爆発的噴火の宝永スコリア,大室山火砕噴出物,非爆発的噴火の貞観青木ケ原溶岩流,大室山溶岩流,猿橋溶岩流,三島溶岩流等の岩石組織の検討を行った.宝永噴出物や,大室山の噴出物は斑晶に乏しく,それらは直接地下15km付近のマグマ溜りから直接上昇・噴火している可能性が強い.一方,貞観噴出物等の非爆発的噴出物では,斜長石が20〜30%含まれ,カンラン石,単斜輝石,斜方輝石斑晶を含む場合がある.これらの組織を検討すると,一旦マグマが浅所で脱ガスして結晶作用を生じた後に再度新鮮な揮発性成分に富むマグマの貫入・混合を受けた証拠を示している.富士火山の斑晶質溶岩の大半の斑晶は浅所でのマグマ脱ガスに伴うものであり,その結晶作用のタイムスケールの見積もりについても述べる.
  • 鈴木 由希, 藤井 敏嗣
    セッションID: S1-18
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    噴火時のマグマ上昇過程で,噴火強度が決定される段階や条件を調べるため,富士火山湯船第二スコリア(2200年前)を研究した.石基マイクロライトの組織を手がかりに,マグマ減圧速度の噴火を通じた変化や,個々のマグマの減圧履歴を調べた.噴火初期 (a)から終期(e)までを通して見ると,噴火の強度とマグマの減圧速度に正の相関がある.噴火終期に向かい,同時期に噴出したマグマの減圧速度の多様性が大きくなる.これは,1)火道横断方向に速度勾配が発生したこと,2)噴火最盛期(b)の後に,マグマ溜りの過剰圧が減少し,これにより一部のマグマが火道をゆっくりと上昇したこと,による.最終的に,二つの要因で,噴火強度が決定された.一つ目は,マグマの減圧速度の変化に応じ,上昇するマグマから気相が分離する効率が決定されたことである.二つ目は,火道径の変化が,マグマの上昇速度と相まり,マグマの噴出率を決定したことにある.
  • 嶋野 岳人, 井口 正人, 横尾 亮彦
    セッションID: S1-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    マグマ物質を直接かつ連続的に解析する方法の確立とそのデータに基づく噴火推移予測を目指し,我々は自動火山灰採取装置を中心とする連続自動噴出物採取システムの確立を行った。一方,マグマの火道上昇過程や爆発時の情報をマグマ物質から読み取り,火山活動の指標となる観測量を見出すため,様々な分析を行った。その結果,諏訪之瀬島火山では火山活動が活発で連続的に噴火しているときほど低石基結晶度,高発泡度の火山灰が放出され,活動度の低いときには高石基結晶度,低発泡度のものが放出されることが分かったため,これらの量比を指標にして活動度の評価を行った。また,桜島火山では,化学組成の時系列バリエーションから,比較的よく似ているが僅かに組成の異なるマグマが絶えず混合していることが示唆された。
  • 藤縄 明彦, 伊藤 太久
    セッションID: S1-20
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    安達太良火山に共存する、ソレアイト(TH)、カルクアルカリ(CA)両マグマ系列は、互いに異なる親マグマに由来し、独立した進化過程を辿った事が明らかにされている。今回、本火山で,同時期噴出の両系列岩を選び、より精度を上げた岩石記載、層序に基づく、各マグマ供給系の時間変化を明らかにし、進化過程を比較検討した。 THマグマでは、連続的に積層した堆積物から、短時間内でのマグマ組成変化過程を検討した。岩石学的データは先行研究と調和的で,本系列岩が基本的に結晶分化で関連づけられる一方、噴出順序とマグマ組成との関係は単純ではなく、溜まり内の不均質、あるいは未分化マグマの混入の可能性が指摘される。 CA系列岩に特徴的な同源捕獲岩や不均質溶岩の岩石学的検討から、共通のマグマ源に由来するも,互いに結晶分化では関連づけられない2端成分マグマの混合過程が、本系列マグマの進化に効果的だったことが判明した。
  • Masao Ban
    セッションID: S1-21
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    Scoriae of Z-To5 tephra in Zao volcano, NE Japan were formed by the mixing of three magmas: basalt with high-Mg (Fo〜81) olv and An-rich plg; basaltic andesite with Mg-rich opx (〜78, Mg#) and cpx (〜78, Mg#), lower-Mg olv (Fo〜78), and An〜85 plg; and andesite with Mg-poor opx (61-66, Mg#) and cpx (64-68, Mg#), and An-poor plg. The basaltic magma was formed by fractionation of Fo〜85 olv from a less differentiated magma during fast ascent from depth. The andesitic shallow magma chamber was heated by underplating of the basaltic magma, and then, the basaltic andesite magma was formed by mixing of the basaltic and andesitic magmas in the chamber. Textural and chemical evidence for the rapid growth of phenocrysts in the basaltic andesite magma suggests that the magma residence time was short.
  • 中村 美千彦, 大槻 静香, 味喜 大介, 井口 正人
    セッションID: S1-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    活動が活発化している桜島火山では,粗粒火山灰や豆石サイズの小岩片が山麓まで飛散している。噴出直後に採取されたそれらの試料には,通常の軽石や溶岩にはあまり見られない,以下のような特徴的な組織が見られた。(1)含水マグマの減圧脱水によるリキダスの急上昇と冷却によって生じた大きな過冷却条件での石基鉱物の急成長組織。火道内部の極端な低圧高温条件下に長時間置かれたことで結晶度が非常に高い。(2)低封圧下での結晶化による体積減少と脱水の進行によって生じた高い空隙率。(3)高温・高酸化状態での斑晶鉱物の離溶・酸化組織,および周囲のメルトとの反応組織 (4)(1)によって発生した空隙を流れる比較的高温の火山ガスから気相成長した鉱物 (5)比較的低温の火山ガスあるいは熱水から成長したと考えられる鉱物と,豆石様構造。これらの組織は,現在の桜島の火道内部物質の浸透率が高い状態にあることを示唆する。
  • 斉藤 哲, 石川 正弘, 柴田 聡, 秋月 龍之介, 有馬 眞, 巽 好幸, 荒井 章司
    セッションID: S1-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    海洋地殻~上部マントルが露出したものと考えられているオマーンオフィオライトの構成岩石について、その地震波速度を求め海洋地殻の岩石構造について検討を行った。本研究で求めたオマーンオフィオライトの岩石のP波速度と海洋地殻のP波速度構造と比較すると、枕状溶岩とドレライトのP波速度は海洋地殻第2層から第3層の速度に、斑れい岩類のP波速度は第3層の速度にそれぞれ相当する。 高速拡大域の海洋地殻第2層は溶岩層とシート状岩脈群を主体とすることが知られているが、オマーンオフィオライトの枕状溶岩とドレライトのP波速度計算値は海洋地殻第2層に比べてやや大きい。海洋地殻第2層の速度構造は地殻内の空隙の分布を反映している可能性がある。一方、斑れい岩類は、かんらん石などの有色鉱物の割合の増加に従い速度が上昇する傾向がみられたことから、第3層内のゆるやかなP波速度の上昇は、有色鉱物量比の増加によるものと考えられる。
  • 遠藤 大介, 荒川 洋二, 大鹿 淳也, 新村 太郎, 森 康
    セッションID: S1-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    伊豆弧北西部に位置する新島は、流紋岩主体の火山で、一部に玄武岩質噴出物を伴っている。今まで、一色(1987)、Koyaguchi (1986)、松井他(2009)などの研究があるが、各種マグマの起源や成因に関しては、必ずしも明瞭にされていない。本研究では、鏡下観察、各種鉱物の化学組成、全岩主化学組成、微量元素組成、およびSr-Nd同位体組成の分析を用い、マグマの起源や生成過程について推定を試みた。その結果、マフィック斑晶鉱物による4タイプに分類される流紋岩は、起源マグマの違い、およびマグマ混合等により説明が可能であることが明らかになった。また玄武岩(および包有物)は、流紋岩類と比較しSr同位体比に違いが見られ、起源物質の違いが示唆された。また、従来から報告のあるトーナル岩、新たに確認された花崗岩、はんれい岩捕獲岩の鉱物組成や、元素・同位体組成の特徴を基に、流紋岩、玄武岩類との比較研究を試みた。
  • 大鹿 淳也, 荒川 洋二, 遠藤 大介, 新村 太郎, 森 康
    セッションID: S1-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    伊豆ボニン島弧北部、伊豆半島南端に位置する南崎火山は0.43Maにベイサナイト質溶岩を噴出した。ネフェリンの存在など島弧的でない岩石学的、地球化学的特徴は以前より知られている。噴出物は塊状溶岩、層状溶岩、スコリアに分かれる。全岩化学組成は未分化なマグマを示唆する。しかし、Sr, Ba, Ti, Zr組成には噴出物による違いが見られ、部分溶融の程度の違いが反映していると考えられる。微量元素、希土類元素組成および鉱物組み合わせ(かんらん石+単斜輝石)は起源物質がカーボナタイト質マグマに汚染されたマントルであることを示唆している。
  • 葛巻 貴大, 大場 司
    セッションID: S1-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
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    栗駒火山南麓周辺では,カルデラが密集しカルデラクラスターを形成しており,その周辺にはこれらカルデラ起源の火砕堆積物が広く分布している.これらのうち,新第三系の小野田層中の火砕堆積物は層序が未確定であり,年代値・岩石学的特徴も報告が少ない.本研究では,これらの層序・岩石学的特徴および新たに2試料の年代測定値を報告する. 小野田層中の火砕堆積物は下位より,湯浜凝灰岩,縮沢凝灰岩,鵙目凝灰岩,東昌寺沢凝灰岩である.湯浜凝灰岩,縮沢凝灰岩,東昌寺沢凝灰岩は,主に火砕流堆積物からなり,鵙目凝灰岩は下部の降下堆積物と上部の火砕流堆積物からなる.これらの凝灰岩は,IUGSによる分類に従うと,東昌寺沢凝灰岩はデイサイト,その他の凝灰岩は流紋岩に分類される.また,K-Ar年代測定結果として,縮沢凝灰岩について1.00±0.06Ma,東昌寺沢凝灰岩について0.87±0.21Maが得られた.
S2:表層環境における鉱物─水界面とナノ鉱物
  • 高橋 嘉夫, 柏原 輝彦
    セッションID: S2-01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    水酸化鉄は、地球表層の様々な環境中に存在するナノスケールの粒子で、反応性が高く巨大な表面積を持つため、微量元素の挙動に大きな影響を与える。そのため、微量元素との反応の最も基本的なプロセスである水酸化鉄表面への吸着反応に関しては、様々な角度から多くの研究が行われている。本講演では、こうした水酸化鉄の研究の中でも比較的新しいトピックスとして、吸着に伴う微量元素の同位体比の変動や微生物の関与の影響に関する筆者らの最近の研究を紹介する。Mo同位体比の研究では、マンガン酸化物への吸着種に軽い同位体が濃縮する一方で、ferrihydriteとの反応では同位体分別は生じないことが分かった。Bigeleisen and Mayer (1947)によれば、軽い同位体は配位数が大きく結合距離が長い化合物側に濃縮する。我々がEXAFS法の適用により明らかにしたMoの吸着構造は、この理論的な予測とよく一致する。
  • 上石 瑛伍, 宇都宮 聡
    セッションID: S2-02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    高レベル放射性廃棄物中に含まれるセレン-79は、一般的な地下水の環境において陰イオンとして存在するため比較的地層中を移動しやすい核種である。また、アパタイトは陰イオンの固定に有効な性質を持ち、セレンに対する拡散遅延効果が期待される。本研究ではハイドロキシアパタイトとアパタイトと同様の結晶構造を持つハイドロキシパイロモーファイトによるセレンの隔離メカニズムを明らかにすることを目的として、セレンの固定実験を行った。ハイドロキシパイロモーファイトによるセレンの固定はモリブドメナイトの沈殿によって固定された。一方、ハイドロキシパイロモーファイトが生成する条件下にセレンを加えると、ハイドロキシパイロモーファイトとセレンの共沈反応がみられた。
  • 古川 雅志, 宇都宮 聡, Watson Bruce, Ewing Rodney
    セッションID: S2-03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、合成によりPbを取り込ませたジルコン中のPbについて透過型電子顕微鏡を用いてナノスケールでの解析を行った。以下の条件で二価のPbを取り込ませた3種類の合成ジルコン中のPbの存在状態について解析した。(i)無水条件、1430 oC、大気圧下、(ii)熱水条件、800 oC、1.0 GPa、(iii)熱水条件、900 oC、1.5 GPa、P2O5 添加。解析結果より、タイプI:PbO・xH2O粒子(50 - 200 nm)、タイプII:粒界中に濃集している非晶質Pb相、タイプIII:球状のリン酸鉛(-100 nm)、タイプIV:ジルコンの格子中に取り込まれているPb、という4つのPbの状態が明らかとなった。Pが存在しない系ではPbはタイプIとしてのみ存在するが、P豊富な系においては、PbはタイプIだけではなくタイプIIからIVとしても存在している。
  • 佐久間 博
    セッションID: S2-04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    固/液界面の構造は、鉱物表面における電気二重層の実態、粘土鉱物の分散・膨潤、毒性元素の収着、元素分配、断層岩の摩擦係数と直接関連して重要である。バルク状態と構造・物性が異なる液体は固体表面から数分子層程度と考えられており、ナノメートルスケールの分解能を持つ研究手法が必要である。白雲母/0.5 M NaCl水溶液界面の構造解析を1Å以下の分解能で行うため、X線CTR散乱法と分子動力学(MD)計算を組み合わせた研究を行った。X線CTR散乱法により得られた横軸がQ [Å-1]、縦軸が構造因子[a.u.]のプロファイルは超純水とNaCl水溶液の実験で明確な違いがあり、雲母/NaCl水溶液界面の構造が雲母/超純水界面の構造と異なることが明らかになった。解析の結果、白雲母表面から約15 A程度までNaCl水溶液の電子密度の振動があり、この電子密度は水和Naイオンと配列した水分子に由来することがわかった。
  • 吉野 徹, 鍵 裕之
    セッションID: S2-05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
     カルサイトへき開面に形成するエッチピットに観られるroundingと溶解の律速過程との関係について報告する。
  • 玉田  攻, Gibbs Gerald, Boisen Monte, Rimstidt Donald
    セッションID: S2-06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    Gaussian03プログラムを用いて、B3LYP/3-21G*とB3LYP/6-311G(2d.p)レベルで、シリカの溶解計算実験を行った。Si4O6(OH)4のシリカモデルを用い、1分子のNaOHと最大5分子の水を導入した。水酸化ナトリウム、水分子、シリカモデルの表面部分SiO3(OH)は表面反応部分として原子を動かし、残りのSi3O3(OH)3部分をシリカ内部として原子を止め構造最適化を行った。 活性化エネルギーは88 kJ/mol (零点振動の補正後85 kJ/mol)であり、これは実験による活性化エネルギー46-96 kJ/molの範囲内にある。  この計算実験により、ナトリウムが表面Siを5配位で安定化させ、これによりSi-O距離が伸び、結合を弱め、そのためSi-O結合を簡単に素早く切断することができることが判明した。このことがシリカにおけるアルカリの溶解促進作用として働いているものと結論される。
  • 月村 勝宏, 鈴木 正哉, 鈴木 庸平, 村上 隆
    セッションID: S2-07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    溶液中でナノ粒子が溶解し結晶が生成している場合の結晶化速度理論について発表する。この理論では、核形成がナノ粒子上でのみ行われること、結晶成長はある大きさで止まること、溶液濃度はナノ粒子の溶解度に近いことを仮定している。この仮定をもとに、R(t) (時間の関数としての結晶の割合)についての積分方程式を導いた。この積分方程式の解は逐次近似法で求めた。R(t)はt=r/Gで変曲点を持つ。ここで、rは結晶成長が停止したときの結晶の半径、Gは成長速度である。tが変曲点よりも小さいときRはtの4次関数に近くなり、tが変曲点よりも大きいときはRは指数関数となる。この理論をフェリハイドライトやTiO2に応用した結果、これまでの実験値と一致した。この理論からは、結晶化速度を決めているのは核形成速度であり、結晶成長速度が遅いときに誘導期が観察されることがわかる。
  • 菅崎 良貴, 村上 隆
    セッションID: S2-08
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    現在の地球表層では、鉄は水溶液中でFe(II)、Fe(III)イオンの状態で存在し、Fe(II)は不安定で酸化反応によりFe(III)となり、Fe(III)は(hydr)oxideとして直ちに沈殿する。Fe(II)酸化速度は、主にpHと溶存酸素濃度(DO)に依存し、-d[Fe(II)]/dt=k[Fe(II)][O2][OH-]2 (1)に従うことが5<pH<9、pO2=0.107-0.195atm、0.308-0.903atmで求められてきた。  一方で、初期原生代の酸素進化を古土壌中の残存Fe(II)/Fe(III)比と(1)式で示される酸化速度-pO2の関係から見積もるということが行われている。25-20億年前にpO2が<10-6atmから>10-3atmに上昇したと考えられているので、(1)式の酸素濃度適用範囲を考えると外挿することになる。正確に計算するには、pO2<10-3atmでの酸化速度- pO2の関係を正確に評価する必要がある。本研究では、-d[Fe(II)]/dt=k[Fe(II)][O2]x[OH-]y としてpO2=10-3、10-4atm近傍でのxを酸化実験により評価した。pO2∼10-4atm では、x=1から予測される酸化速度より1オーダー程度速く酸化が起こる、という結果を得た。これにより(1)式を用いた古土壌からの酸素濃度推定に大きな見誤りがある可能性が示唆される。
  • 赤井  純治, 秋山 茂樹
    セッションID: S2-09
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    マンガンのジュールの電顕観察と形態のシミュレーション検討を行い、バクテリアのバイオミネらぃぜーションと形態がフラクタルと推定できた。つまり、DLAのfractal growthの拡散律速の濃度勾配と拡散速度にかかわるところにバクテリアによるMn(及びFe他重金属)の濃集が対応している成長パターンと解釈できる可能性を指摘する。これは、ストロマトライト一般の成長メカニズムへも示唆的である。以上から、Mnノジュールとは、DLAフラクタル成長過程の一部にバクテリアのバイオミネラリゼーションがかかわるという、成長機構が推定され、Mnノジュールはフラクタル的な特徴をもつストロマトライト集合としてとらえることができる。
  • 斉藤 拓巳
    セッションID: S2-10
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    実環境中では,異種のコロイドや表面が共存し,それらの間の相互作用のために,イオンの吸着が影響を受け,吸着モデルの加算性が成立しないことが報告されている.本研究では,フミン酸(HA)とゲータイト間の相互作用がどのようにH+, Cu2+, UO22+の吸着に影響を及ぼしうるかという点を明らかにすることを目的として, 2元系および3元系における吸着実験の比較を行った.H+については,ゲータイト表面へのHA自体の吸着の結果,低pH領域で,HAに負電荷(H+脱離)が,高pH領域でゲータイト表面に正電荷が誘起(H+共吸着)されることが分かった.さらに,Cu2+の場合は,HAとゲータイトの間の相互作用による正味の吸着量の増加が, UO22+の場合は,減少が見られた.前者に関しては,ゲータイト表面において,協奏的にHAからのH+脱離とCu2+の(HAへの)吸着の促進により,後者は,HAとUO22+のゲータイト表面サイトに対する直接的な競合によることが示唆された.
  • 金子 誠, 仲松 有紀, 古川 雅志, Zhouqing Xie, 宇都宮 聡
    セッションID: S2-11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    鉄は大気中に含まれる主要な遷移金属の一つで、大気化学や生物学的過程において重要な役割を果たすと考えられている。本研究では、2010年3月末に東アジアで起こった大規模な黄砂を合肥と福岡で同時に採取したサンプルについて電子顕微鏡による直接分析と、XAFS、XRDを用いたバルク分析を組み合わせたマルチスケール解析を行い、黄砂中の鉄含有鉱物についてその特性を明らかにした。その結果、本研究対象の黄砂中における鉄含有鉱物相は複数種存在し、かつ粒径に依存するが、優勢な相に関しては付着している三価の微粒子である可能性が示唆された。さらに今回の中国~日本間の黄砂輸送時における鉄成分化学種の変化は無視できる程度であることがわかった。
  • 仲松 有紀, 金子 誠, 古川 雅志, 西田 千春, 宇都宮 聡
    セッションID: S2-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    大気中微粒子の負の健康影響が注目されている中で、主要な元素である鉄に注目し化学状態解析を行った。大気試料は福岡県福岡市で、カスケードインパクターとハイボリュームエアサンプラーを用いて採集した。XANES解析の結果、Feは主に3価で存在していた。SEM-EDXの点分析(469点)を行った結果、粒径1 µm以上のFe含有粒子にはSiとAlが多く含まれており、粒径1 µm以下ではSiの割合が減少しSの割合が高くなっていた。TEMを用いた個別微粒子分析から、粒径1 µm以下のFeを含む粒子では球状のマグヘマイト(γ-Fe2O3)の割合が高く、また球状であることより粒子表面の活性部位が多いと考えられる。さらにTEM-EDXの結果、粒径100 nm以下のマグヘマイトにはMnが多く含まれており、共存しているクロムなどの重金属の酸化が促進され、粒子の生体への毒性が強まると考えられる。
  • 坂巻 景子, 岩田 孟, 宇都宮 聡
    セッションID: S2-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    放射性廃棄物処分において、ベントナイトは処分場特有の化学的条件下で変質し、バリア機能を失うことが懸念されている。本研究では高アルカリ条件下、硝酸ナトリウム存在下でベントナイトの変質挙動を明らかにすることを目的とした。実験は鉄片を埋めた圧縮ベントナイトをCa(OH)2飽和の模擬地下水と5.0 mol/L硝酸ナトリウム溶液に浸し、60度で7-21日間変質させた。分析はICP-AES、SEM、TEM、XAFSを用いた。分析から、鉄含有鉱物の生成や鉄ナノ粒子がベントナイト中に散在していることが明らかになった。また硝酸ナトリウムによってベントナイトは多孔質な物質に変化した。本実験に近い条件下で鉄ナノ粒子の生成が起きると、放射性廃棄物処分場において核種の拡散が促進される可能性があると考えられる。
  • 八木 新大朗, 福士 圭介
    セッションID: S2-14
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    化学肥料として利用されるリン酸は排水から湖沼に供給されることで富栄養化に代表される水質汚染を引き起こす。一方、リン資源は今後枯渇が懸念されており、排水からリン酸を効果的に回収し、再利用するための技術開発が望まれている(Kuroda, 2005)。  Ca炭酸塩鉱物の準安定相としてモノハイドロカルサイト(以下MHC)が知られている。準安定相は安定相より一般に比表面積が大きく反応性が高いことから(Fukushi and Sato, 2005)、MHCは安定相のカルサイトやアラゴナイトより高い溶存種の取り込み能力を持つことが期待される。本研究ではMHCによるリン酸の取り込み実験を行い、取り込み挙動とメカニズムを明らかにすることを目的とする。  
  • 光延 聖, 高橋 嘉夫, 坂田 昌弘
    セッションID: S2-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    アンチモンは、近年環境中への汚染が問題視されている有害元素である。アンチモンは土壌や堆積物中では水酸化鉄鉱物へ取り込まれて存在していることが報告されているが、その取り込みメカニズムはよくわかっていない。 そこで本研究では、広域X線吸収微細構造(EXAFS)法を用いて直接的に局所構造を決定し、アンチモンの水酸化鉄鉱物への取り込みメカニズムを考察した。特に天然環境における水酸化鉄鉱物への微量元素の取り込み様式には、吸着と共沈の2種が考えられるため、アンチモンを代表的な水酸化鉄鉱物(ferrihydrite, goethite)へ吸着および共沈させた試料を比較した。
  • 青山 和樹, 福士 圭介
    セッションID: S2-16
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    鉱物表面への元素の吸着は、土壌や水域環境において元素の濃度や移動性を支配する重要なプロセスである。長期的な吸着挙動を評価するには、元素の鉱物表面における吸着形態(表面スペシエーション)を明らかにする必要がある。表層環境に広く分布するナノ鉱物のフェリハイドライト(Fh)は、天然水中でその表面が正に帯電する特性を持つ。そのため、陰イオンの優れた吸着体とされている。硫酸イオンは、共存する他の無機陰イオンや微量金属、有機酸の吸着性に影響を与えていることが知られている。本研究では、その場ATR-FTIR観察を用いて、Fhにおける硫酸表面スペシエーションを幅広い溶液組成(pHとイオン強度)で解明することを目的とする。
  • 福士 圭介, Sverjensky Dimitri
    セッションID: S2-17
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    モリブデンは生物にとっての必須栄養素であり、欠乏により健康被害が生じることが知られている。またモリブデンは酸化還元状態に応じて挙動が大きく変化することが知られており、海底堆積物に保存されるモリブデン同位体組成は古海洋酸化還元状態のプロキシとなりうることが知られている。モリブデンの地球表層環境における生物地球化学的挙動は様々な分野で注目されているが、その挙動に影響を及ぼす素過程はわかっていないことが多い。微量元素の水圏環境中での濃度や移動性は、鉱物表面への吸着プロセスによって支配される。本研究はこれまでに報告されるモリブデン酸の酸化物への吸着データを表面錯体モデリング手法であるExtended Triple Layer Model (ETLM)により解析することで吸着素過程を考察する。
  • 猿渡 和子, 小松 一生, 三河内 岳, 鍵 裕之, 長澤 寛道, 小暮 敏博
    セッションID: S2-P01
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    ヒザラガイの摂餌器官である歯舌には、磁鉄鉱を形成する大側歯の存在が知られている。この大側歯は、ヒザラガイの種類に応じて形態が異なり、またその配列数も数十から百近くまで変化する。構成鉱物として、磁鉄鉱の存在はほぼ普遍的に確認されているが、水酸化鉄の存在やヒドロキシアパタイトの有無は種によって変化する。化学組成からは、様々な重金属の濃集の他に、カルシウムの濃度が高いものと少ないものの2種類に大別される。本研究では、カルシウム濃度の高く、ヒドロキシアパタイトの存在が確認されているAcantopleura japonicaとカルシウム濃度の低いAcantochitona achatesの2種類のヒザラガイの歯舌について、生体鉱物化過程の解明を目的として様々な鉱物学的解析を行った。
  • 赤井 純治, 阪根 嘉浩, 大串 知音
    セッションID: S2-P02
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    バクテリアとして硫酸塩還元バクテリア(Sulfate Reducing Bacteria;以下SRBと表記)を用い培養実験を行い、フランボイダルパイライトの生成実験をおこない、成功したので、その結果を報告する。
  • 市村 康治, 村上 隆, 実松 健造, 昆 慶明, 高木 哲一
    セッションID: S2-P03
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    花崗岩の現代風化による希土類元素の挙動を調べるため、稲田の花崗岩およびその風化土壌の希土類鉱物の観察と分析を行った。風化土壌で観察されたrhabdophaneはCe異常の値(Ce/Ce*)のばらつきが大きく、Ce(III)の酸化速度論的要因が作用している可能性が考えれられた。したがって、大気酸素進化を推定するためにrhabdophaneのCe異常の値を用いる場合、その最小値を使うことが有効と考えられる。
  • 椿 晴香, Salinas Marcelo Rocco, 月村 勝宏, 村上 隆
    セッションID: S2-P04
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    チリ,サンティアゴ市内を流れるLampa川で,長さ約1 kmに渡り河川水の化学的性質が変化していることが報告されている(Rocco, 2008)。川が流れるにつれてEh,pH,主要元素・微量元素・SO42-濃度が大きく増減し,元素濃度の増加は川底の堆積物の分析から硫化鉱物の溶解,微量元素濃度の減少は二次的ナノFe酸化物の関与によるものと考えられた。このようなナノ鉱物は通常河川水の化学分析に用いられる450nmのフィルターでは濾液に含まれる。そこで,450nmに加えて100, 25, 5nmのフィルターを用いることにより,ナノ鉱物を除いたあとの濾液を分析した。その結果,5nmのフィルターの濾液は他の溶液と比べて高濃度・同程度・低濃度という微量元素の濃度差があった。ナノ鉱物を形成することが期待される主要元素であるFe, Mnは5nmで増加し,3種類の微量元素の挙動と必ずしも一致していなかった。
  • 松浦 圭, 村上 隆, 張 銘
    セッションID: S2-P05
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    初期原生代における酸素増大は、地球史上最大規模とされ、地球表層環境の劇的な変化をもたらしたと考えられる。本研究では、微量元素は海洋化学、大陸の化学に関する情報を保持しており、初期原生代の微量元素の挙動に注目した。当時の風化帯における微量元素分布及び元素の流出の指標である元素残存率に熱力学的な考察を加え、大気酸素上昇、海洋化学組成の変化を検討した。 試料は、現在から約27.6億年~18.5億年前の古土壌である。微量元素に関してはICP-AES/-MS、主要元素に関してはXRFにより定量を行った。得られた濃度から、元素プロファイル及び元素残存率(未風化の原岩と風化帯での元素存在比)を得た。なお、原岩の微量元素の不均質性に関しては、原岩において極端に低濃度でなければ、上記データの適用が可能であることが分かった。結果は以下のとおりである。 Co, Ni, Znは、22-24億年前以前は大陸から流出傾向で、それ以降は保持される傾向にある。Cu, Cr, V, Moは、22-24億年前以前は大陸に保持されていたが、その後流出傾向にある。Wに関しては、初期原生代を通して流出傾向にある。 以上の結果は、酸素の増大は従来より指摘されてきた劇的な増大よりも、より緩やかな増大を支持する。また、古土壌が海洋化学組成のプロキシとなりうる可能性、海洋化学組成に寄与していた可能性を示唆している。
  • Satoshi Utsunomiya, Yuki Nakamatsu, Makoto Kaneko, Masashi Kogawa, Zho ...
    セッションID: S2-P06
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    There are various reactions between nanoparticles and biological tissues, which strongly depend on the speciation and form of constituent elements. We have focused on the speciation of metals particularly on fine fraction of PM to elucidate the toxicity of those particles. Research targets were urban PM from Detroit, Fukuoka, Hefei, and a NIST standard (SRM1649a). Advanced electron microscopy and synchrotron-based X-ray absorption fine structure have been utilized. The results obtained from these samples reveal the complex mixing state of toxic metals and the size-dependent phase heterogeneity bearing the elements of interest. This presentation summarizes the results obtained from our recent projects focusing on the speciation of metals: Fe, Pb, Cr, and Mn.
  • 玉村 修司, 高田 貴裕, 長尾 誠也, 山本 政儀
    セッションID: S2-P07
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/04/06
    会議録・要旨集 フリー
    226Raはウランの採鉱や深層地下熱水の揚水などに伴い、環境中に放出される物理的半減期1600年の可溶性放射性核種である。地下水中の226Ra濃度は塩濃度と正の相関があり、塩分による226Raの固相分配抑制効果が、226Ra濃度の規定因子として挙げられている。地層構成鉱物として普遍的に認められる粘土鉱物は、陽イオン交換容量と反応比表面積が大きく、地下水中における226Ra濃度の塩濃度依存性を支配する可能性がある。しかしながら、粘土鉱物に対する226Raの吸着反応は必ずしもイオン交換的でなく、226Raの地下水中における挙動評価を難しくしている。そこで本研究では、陽イオン交換容量(CEC)の異なる粘土鉱物に対する、226Ra吸着量の塩濃度依存性を調べ、そのメカニズムの解明を試みた。さらに、粘土鉱物の種類や含有量の違いが、地下水中の226Ra濃度の塩濃度依存性に与える影響を考察した。
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