静岡県西部・天竜地域に分布する三波川帯の西部・東部両ユニットからそれぞれ砂質片岩を採取し,同一資料に対して白雲母K-Ar年代及び砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定を行った.その結果は,西部ユニットの試料の白雲母K-Ar年代は70 Maを示した.ジルコン年代は、年代分布は93~96 Maで,それらの平均は94 Maを示す.一方で,東部ユニットの試料の白雲母K-Ar年代は55 Maを示し,砕屑性ジルコンの年代はいくつかのピークを持ち,最も若い年代は73 Maを示す.それぞれの年代値を考慮すると,西部ユニットが変成していた時点で,東部ユニットは堆積段階であったことが示される.これは,堆積―変成年代の異なる複数のユニットの存在を示すものと思われる.また,天竜地域に於いても付加年代が後期白亜紀である事が明らかになり、いわゆる「120 Ma変成岩」の存在は確認できなかった.