山口県東部の岩国地域には,ジュラ紀の玖珂層群から領家帯変成岩類が連続して分布する.すなわち,岩国地域では地殻浅部から深部へ至る連続した層序・岩相を観察することができる.しかし,非変成堆積岩から変成岩への移り変わりについては不明な点が多い.そこで,玖珂層群と領家帯低変成度岩の関係について炭質物の結晶化度を用いて検討した.鉱物組合せの変化から調査地域中央部には黒雲母アイソグラットが定義され,変成度は南部へ上昇する.また,熱構造の詳細を検討するため泥質岩に含まれる炭質物を分離し,XRDで結晶化度を測定した.その結果,玖珂層群に発達する変形構造とは無関係に,南部の領家帯へ向かって変成度は累進的に上昇していることが明らかとなった.本地域に分布する玖珂層群は付加体として堆積した後,変形作用を受け,その後低圧高温型の領家帯変成作用を受けたと推察される.