抄録
兵庫県朝来市山本に位置する新井鉱山からCuに富むシューレンベルグ石を見出したので,その鉱物学的性質について報告する.新井鉱山産シューレンベルグ石は直径0.5 mm,厚さ0.1 mm以下の六角板状結晶の集合体をなして,ズリ中の頁岩の表面に見出された.本鉱物は肉眼的には淡緑色半透明で,真珠光沢を呈する.粉末X線回折値から求めた格子定数はa = 8.216(4),c = 7.108(6) Å,V = 415.5(6) Å3である.KBr法によるFT-IRでは,O-H伸縮振動,H-O-H変角振動,SO4伸縮振動,SO4変角振動による吸収がそれぞれ認められたが,CO3による明瞭な吸収は認められなかった.SEM-EDXによって得られた実験式 (Cu + Zn + Fe = 7 apfu) は (Cu6.62Zn0.36Fe0.02)?7.00[(SO4)2.03(SiO4)0.08]?2.11(OH)9.87・2.94H2Oである.Cu/(Cu + Zn) 比は0.93-0.96で,これまでに報告されたシューレンベルグ石の中で最もCuに富んでいる.今回の分析結果は,Zn,CO3がシューレンベルグ石の本質的な成分ではない可能性を示唆している.