広島県東城町久代の高温型スカルンより、ホウ素を含有するP4ncベスブ石を見出した。5つの単結晶でホウ素が検出され(B2O3 0.8 - 1.8wt%),消滅則による検討から,それらはすべてP4nc-優性であった。P4ncで結晶構造を精密化し,R因子は2.8 - 3.2%となった。ホウ素を含有するベスブ石はこれまでにも多く報告されているが,Wiluiteに代表されるように,P4/nncの高温型がほとんどであり,低温型であるP4ncベスビアナイトでの報告は本研究が初めてであろう。 格子定数は同産地の他のタイプと比較してc軸が短く,ホウ素の含有量と格子定数(とくにa軸)に相関関係が認められる。精密化された席占有率の値より,ホウ素の含有量は3配位のT2席を埋めるのに充分ではあるが,一部は4配位のT1席に入っていると考えられる