京都府和束町石寺地域の灰色石英脈に伴って産する純白色の微細粉末混合体の粉末XRD解析を行なった結果,anthoiniteとmpororoiteの混合物が確認された.これらはいずれも日本からの産出報告がなく,今回が初めての報告である.この混合物は石英脈中で多角形の輪郭をしたまま含まれており,内部に残留scheeliteも見られることから,scheeliteの自形結晶が分解した仮像と考えられる.内部には残留scheelite以外に,無色~薄黄色透明のガラス光沢をした微結晶体が共存したものも存在する.この微結晶は一辺10-50 μmの正八面体をしており,粉末XRD解析およびEPMA分析の結果,alumotungstiteであると考えられる.Alumotungstiteも日本で報告がなかった鉱物種であったが,昨年pyrochlore族の命名法の改訂により,日本でも普遍的に分布しているferritungstiteなどとともに“hydrokenoelsmoreite”に統合された.ただ,いずれにせよ,ほとんどFe-freeのhydrokenoelsmoreiteは日本では初めての産出であり,これら3種の稀産鉱物が確認されたことからきわめて特殊な生成環境があったことが推察される.