抄録
沈み込むスラブは比較的低温であるため、鉱物が相境界を超えても平衡相関係に従わず、非平衡相として存在する可能性が示唆されている。本研究では、garnet粒内のSiAl拡散速度を決定し、この拡散反応が律速すると考えられるpyroxene-garnet相転移速度を定量的に明らかにすることを目的とした。拡散実験は愛媛大学のマルチアンビル型高圧発生装置を使用して行った。出発物質として、化学組成の異なる2種類のgarnet(pyropeとmajorite)を用いた。試料の拡散プロファイルの分析には、愛媛大学設置の透過型電子顕微鏡(TEM-EDS)を使用した。得られた拡散プロファイルからgarnet中のSi-Alの拡散係数を決定し、相転移速度とその温度依存性を決定した。 pyroxene-garnet相転移が十分に進行するために必要な温度は沈み込むスラブ内の温度より高く、沈み込むスラブ内ではこの相転移が非常に進行しづらいことが示唆された。