抄録
北部オマーンオフィオライトの底部かんらん岩の岩石学的・地球化学的性質を記載し,オフィオライト衝上時に形成される下位の変成岩(ざくろ石角閃岩)から底部かんらん岩へH2Oなどの流体が付加することによる元素移動について考察する.
かんらん岩は,ざくろ石角閃岩-かんらん岩境界から離れるに従ってレールゾライトからハルツバーガイトへと変化し,全体として蛇紋岩化の程度は低い.ざくろ石角閃岩-かんらん岩境界から50 m程度までは,かんらん岩中には角閃石(ホルンブレンド)が普遍的に存在するが,その量は離れるに従って減少する。単斜輝石と角閃石の希土類元素パターンは,ざくろ石角閃岩-かんらん岩境界近傍では軽希土類元素にエンリッチしているが,境界から離れるに従ってその濃度は減少し,25 m程度離れた試料では検出限界以下となる.オフィオライト底部では,H2Oによっていくつかの不適合元素の付加が認められた.