本研究では、ブルーサイトの格子定数の水素同位体比依存性と、高温高圧下での水素—重水素相互拡散係数の決定を試みた。ブルーサイトのa軸は水素同位体比に依存せずほぼ一定であるが、Mg(OD)2のc軸はMg(OH)2に比べて0.3%ほど小さい。ブルーサイトの水酸基はc軸に配向しており、OD基の換算質量はOH基より大きいため、OD振動のエネルギー固有値はOH基より小さい。このことが、c軸長の減少をもたらしていると考えられる。1.8 GPa,300°Cの実験の拡散プロファイルから得られたH-D相互拡散係数は10-15m2/sオーダーであった。また、Mg(OH)2中でのH-D相互拡散係数は、Mg(OD)2中のものより4倍ほど大きいことが明らかになった。これは換算質量やc軸の水素同位体比依存性から推測される、ODより大きなOH振動の固有値とも整合的である。