日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2012年年会
選択された号の論文の253件中1~50を表示しています
S1:大震災及び福島原発事故にかかわる環境有害元素の挙動を鉱物学から探る
  • 小暮 敏博, 藤井 英子, 吉田 英人, 田村 堅志, 山田 裕久, 八田 珠郎
    セッションID: S1-01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    今回我々は福島県飯館村の水田土壌に高濃度のCsを吸着させ、その吸着箇所をEPMA、 SEM-EDS、FIB、TEM-EDS等を用いて特定し、実土壌中のどのような粘土鉱物にCsが吸着しているかを知る手がかりをつかもうとした。その結果、EPMAの特性X線像でCsを最も強く吸着した鉱物はバーミキュライトとスメクタイト(組成的には鉄をかなり含むモンモリロナイト)であることがわかった。バーミキュライト中のCsの量はスメクタイトの2倍強となっていた。またバーミキュライト中のCsは層間に存在することがHAADF-STEM像より明らかになった。一方本土壌の主要な粘土鉱物であるカオリン鉱物には検出可能なCsの吸着は見られず、また白雲母にもCsは吸着されなかった。
  • 赤井 純治, 野村 奈緒, 松下 新, 松岡 史郎, 工藤 久昭, 福原 晴夫
    セッションID: S1-02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    原発事故でCsによる土壌及び生活環境の汚染はなお深刻な状態にある。鉱物学の視点から、鉱物にかかわる相互作用の視点から、将来の再循環過程集を推定することは意味のあることであり、また除染への示唆をも含む。このために、粘土鉱物への吸着、有機物への吸着と溶脱実験、微生物への吸収、電顕観察等で基礎的な検討を行い、モデル図をたてて、再循環、拡散・濃集を論じる。
  • 野村 奈緒, 松下 新, 赤井 純治, 松岡 史郎
    セッションID: S1-P01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    原発事故によって生活環境の深刻な汚染がある。森林内でのセシウムの挙動解明をめざした基礎的実験を行った。   特に、溶出実験で、異なった吸収メカニズムが推定された。  サクラの溶出率はMg2+で高く、イオン交換によって溶出したと推定される。マツについては KClで溶出率が高く、MgCl2では低い。これは イオン結合ではなく、構造中に取り込まれていることを示唆する。将来的な挙動について、議論する。
  • 三浦 保範
    セッションID: S1-P02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    3.11の地球と最新技術の事故の教訓は、長期の活動地球の詳細な歴史科学と、社会生活に宿命的な更なる技術革新の再確認である。創世期の地球では、主に軽・重元素(放射性元素を含む)が混在して衝突過程で地球外から運び込まれ、鉱物化した固体物質として保存され、地下の活動で元素が濃縮して資源の材料に利用される。多量の海水圏の存在で、海水圏と地殻固体が循環して軽元素や重元素を長期にわたり分離し、常に変化している。これまでの有毒物や放射性廃棄物は、廃棄的処理的で、溶融固化して地中保存等で再利用の視点がないが、筆者らは、活動地球のように種々の元素を継続循環させ、有毒物(炭素・塩素等の化合物)と重元素(鉄族・REE族・放射性廃棄物等)について軽元素を含めた固化によるVLS状態変化を進める。そのため、活動地球の3圏間の状態変化を利用して、有毒物・重元素廃棄物等を再利用できる軽元素による高温固化法を提案する。
S2:岩石−水相互作用
  • 中島 善人
    セッションID: S2-01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    X 線Computed Tomography (CT)は、試料内部の密度や元素の不均一な3 次元空間分布を映像化する手法である.近年急速に発達しているX線CTは, その非破壊性・高分解能性ゆえに 岩石-水相互作用の研究に貢献できるイメージングツールとして有望である. そこで本講演では,これからX線CTを使おうという研究者のための簡単な解説(原理、適用例、使用上の注意点など)を行う.
  • 中村 美千彦, 磯嶋 緑, 藤原 恵美, 吉田 武義, 谷 健一郎, 佐々木 理
    セッションID: S2-02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    一ノ目潟産の下部地殻・マントル捕獲岩を対象に、高電圧パルス放電法を用いて、ナノスケールの結晶表面微細構造を保存したまま岩石粒界を分離して観察することに初めて成功した。その結果①結晶表面には、コヒーレントな粒界面、破壊による脆性破断面の他に、結晶の成長ステップや成長丘、エッチピットなどの表面微細構造を持つ面がしばしば観察された。これらは、二面角からの予測に反して、鉱物が稜部においてではなく面(フィルム)状に流体相と接しながら、溶解析出作用を起こしていたことを示す。さらにX線CTによる非破壊観察を行った結果、②減圧・冷却による緩みでは説明できない面状の空隙が存在し、それらはサンプルスケールで高い連結度を持つこと、③高圧実験で示された、流体が異相粒界に選択的に分布する効果が捕獲岩中でも顕著に見られること、が明らかとなった。以上は、深部岩石の粒界に、面状の流体ネットワーク存在する可能性を示唆する。
  • 川崎 雅之
    セッションID: S2-03
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    地球表層には大量のシリカ鉱物、特に水晶が存在しているが、地球外物質には極めて少ない。地球が他天体に比較して水が豊富であったこと、プレートテクトニクスにより水の循環が容易に行なわれたことが、地殻上部における水晶の形成に繋がった。地球の進化の過程で水の存在が鉱物の多様性を生み出した。水晶の普遍性はその結果の一つである。
  • 奥山 康子, 上田 晃
    セッションID: S2-04
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    北上山地,田野畑累帯深成岩帯とそれにともなう泥質接触変成岩の酸素同位体組成を調べ,接触変成作用における流体挙動を考察した.田野畑接触変成帯には,ルーフペンダント部にて高温の変成岩が熱源である田野畑岩体より幅広く分布する特徴があり,田野畑岩体から上方への選択的熱輸送が考えられていた.接触岩類では,泥質岩の部分溶融が認められる最高温部のざくろ石-菫青石帯とは,それより低温側の鉱物帯の岩石で,酸素同位体組成傾向が全く異なっている.構造的位置関係を合わせて考察すると,田野畑岩体から放出された低い酸素同位体比を持つ流体は,ざくろ石-菫青石帯のミグマタイト・メルトにて吸収・緩衝されて,岩体上方全体に熱輸送を行うことはなかったと考えられる.ざくろ石‐菫青石帯ミグマタイトは,酸素同位体的には田野畑岩体縁辺に伴う花崗質小岩体に類似し,成因上の関係が示唆される.
  • 安東 淳一, 西脇 隆文, 大藤 弘明, 渡辺 克晃, 早坂 康隆
    セッションID: S2-05
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    地表に露出する付加体中に発達する断層岩の微細組織を観察する事は、海洋プレートの沈み込みに伴って生じている様々な断層運動の素過程を理解する上で非常に重要である。今回、付加体を構成しているチャート岩体中に発達する断層表面に認められる鏡肌に着目し、微細組織観察を通じて、その実体と成因を明らかにする事を目的に研究を行った。その結果、鏡肌は断層すべり時に、そのすべり運動がすべり面から約50 nm~100 nmの領域に局所集中し、その結果構成鉱物が力学的に破砕され、最終的に非晶質化する事で形成される事が分かった。またチャート岩の場合、鏡肌を伴う様な断層すべり運動は、流体の関与が不可欠な圧力溶解によって起因される事が示唆された。
  • 土屋 範芳, 山本 啓司, 平野 伸夫, 岡本 敦
    セッションID: S2-06
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    高度変成岩や,斑岩銅鉱床などにはしばしな組成温度領域でも脆性破壊を示す鉱物脈などを観察される.この原因を明らかにするために,流体を注入できるオートクレーブを用いて,熱水破壊実験を行い,流体と岩石の相互作用によって,塑性変形温度条件でも脆性破壊すること実験的に見いだした.特に,減圧によって注入流体が沸騰し,その結果,岩石から沸騰潜熱が奪われることによって,岩石に熱応力割れが生じる条件があることを見いだした.
  • 片山 郁夫, 山口 歌織
    セッションID: S2-07
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    地熱発電の一つである高温岩体発電では,水圧破砕による基盤岩の空隙率と流体の移動速度が重要な要素となるため,本研究では花崗岩を用いた破砕実験による空隙率・浸透率の変化を検証した。一軸圧縮試験により破壊された花崗岩試料では,空隙率・浸透率は系統的に上昇し,封圧20MPaでは空隙率5.5%,浸透率4.1x10-15m2へ達した。これらの値を用い高温岩体テストサイトでの流体移動速度を計算すると,1.6x10-4m/sと見積もられる。注入井と生産井が80m離れている場合,流体の滞留時間は150時間と予想される。この値は,現位置でのトレーサーテストから見積もられるタイムスケール(約70時間)より若干長くなる。
  • 武者 倫正, 土屋 範芳, 岡本 敦
    セッションID: S2-08
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    近年、地球温暖化対策として二酸化炭素の地下貯留技術が研究されているが、炭酸塩の生成速度の遅さから、実用化には未だ問題を抱えている。一方で天然の地殻環境中には方解石の鉱物脈が普遍的に存在している。本研究では地殻環境中での水-岩石相互作用による水熱条件での方解石析出メカニズムを解明することを目的とする。 蒸留水と天然の岩石試料を用いた閉鎖系での溶出実験では、岩石から各種陽イオン(Na, Ca, Si等)が溶出し、塩基性で方解石に過飽和な流体を生成することが判明した。 また天然の岩石試料を用いた熱水流通実験を行い、方解石を析出させる実験を行った。CO2溶液を用いた弱酸性条件での実験では、流体は常に方解石に対して未飽和であった。NaHCO3溶液と泥岩を用いた弱塩基性条件での実験では、実験管内に設置した方解石基板上に0.01mm程度の方解石が析出していることが確認された。
  • 関口 知寿, 平野 伸夫, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-09
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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     本研究では臨界現象の観察と臨界点の決定を目的として,臨界点付近のH2O, CO2, C2H5OHの分光計測を行った.またH2OとC2H5OHの場合,流体を透過する光の強度は臨界点付近において急激に減少した.どちらの試料流体も,透過光の強度が最小になるときの温度・圧力はそれぞれの流体の臨界点と一致した.H2Oの臨界点の実験値は,374.0 - 375.7ºC,21.86 - 22.29 MPa (文献値: 374.15ºC,22.12 MPa),C2H5OHの臨界点の実験値は,242.4 - 243.1ºC,6.04 - 6.11 MPa (文献値: 243.4ºC,6.14 MPa)となった.また,CO2の臨界点の実験値は,31.8ºC,7.37 MPa (文献値: 31.04 ºC,7.37 MPa)となった.臨界温度および臨界圧力の実験値と文献値の誤差はそれぞれ最大で1.6°C,0.3 MPaであった.臨界点の実験値が文献値と比較的よく一致したことから,分光計測を用いた臨界点の測定方法は有効であるといえ,多成分地殻流体の臨界点の測定への応用が期待できる.
  • 藤本 光一郎
    セッションID: S2-10
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    本研究では,カオリナイト,サポナイトをはじめとする粘土鉱物を加熱やメカノケミカルな過程で分解させるとともに,非晶質化した物質を熱水条件で再結晶化させる実験も合わせて行い,粘土鉱物の変化と断層挙動の関係について検討する.粘土鉱物の種類によってその変化はかなり異なり,カオリナイトやスメクタイトの変化は断層の環境や履歴などの推定に使える可能性がある.
  • 東野 文子, 河上 哲生, Satish-Kumar M, 土屋 範芳, 石川 正弘, Grantham Geoff
    セッションID: S2-P01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    東南極セールロンダーネ山地の泥質片麻岩を26地点分調べたところ、東西約200kmに渡りザクロ石に包有される塩素に富む黒雲母が見つかった。うち1地点(以下、本試料)での、塩素に富む流体流入条件は600+/-13Ma、約800℃、8kbarであった。本試料に含まれるザクロ石はPの累帯構造によってコア・リム境界(塩素に富む流体流入期に相当)が定義でき、REEに富む鉱物として、コアにはモナズ石が、リムにはジルコンとゼノタイムが多数包有される。ザクロ石中の包有物が、LREEに富む鉱物からHREEに富む鉱物へと変化し、コア・リム境界でHREEとZrの添加があったように見える。ザクロ石のリムとマトリクスにのみ偏在する粗粒ジルコンはザクロ石中のZrから形成できる最大量を超えており、Zrが外部からもたらされた可能性がある。本観察事項と一致する実験的研究は未だ無く、REEやZrの移動機構を知る上で重要である。
  • 遠藤 俊祐
    セッションID: S2-P02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    岐阜県春日地域の貝月山花崗岩体直近の再結晶ドロマイト岩中からクリントン雲母を含む交代脈(脈状スカルン)を見出した.この交代脈は,幅5cm程度で母岩から脈中央に向かって,苦土かんらん石‐透輝石帯(Zone1),クリントン雲母,スピネル,パーガス閃石,透輝石を含むAl2O3に富む鉱物帯(Zone2),ざくろ石,単斜輝石,斜灰簾石,灰長石,氷長石などからなる鉱物帯(Zone3)が対称的に配列している.花崗岩側から供給されたシリカに富む流体はドロマイト岩の割れ目に侵入し,溶存シリカの壁岩への拡散・反応によりZone1が形成された.引き続いて局所的にアルミナに富む流体が生じ,Zone1と反応してZone2が形成された.
  • 中谷 貴之, 中村 美千彦
    セッションID: S2-P03
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    マントルウェッジにおいて流体がマントルの岩石と化学平衡を達成しながら移動するのかどうかは、 H2Oやメルトの分布と関係する重要な問題である。本研究では、580℃・1.3GPaの条件下でかんらん岩の加水反応速度を実験的に見積もり、上述の問題について検討した。実験は ピストンシリンダで行い、 出発物質に捕獲かんらん岩の粉末と蒸留水(15wt%)を用いた。 実験の結果、olは単独では反応しないが、opxと一緒だと高aSiO2aqにより反応することがわかった。またAl2O3に富んだ低温相のlizarditeの形成が確認された。そして、反応進行度の時間変化から、見かけの反応界面進行速度が1μm/day程度になることが分かった。求めた加水反応速度と浸透流の速度を特徴的な時間で比べると、平衡を達成しながら移動することが示唆され、多く水は蛇紋岩にとらえられて深部まで運ばれることになる。
  • 河村 雄行, 佐久間 博
    セッションID: S2-P04
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    角閃石表面にはさまれた薄膜水について分子動力学法シミュレーションを行なった。水の構造の解析を、温度や圧力などの関数として調べた
  • 三浦 保範
    セッションID: S2-P05
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    水惑星地球の地殻は、海水圏のプレート運動によって形成された大陸岩石であり、水などの揮発性元素はできあがった3圏(大気・海水・固体、VLS状態圏)での議論である。 創世期の地球型惑星と月面の衝突のターゲット物質は、衝突性の多孔質・ガラス質組織であり、衝突時に発生する軽元素(炭素・水素)を含む揮発性元素織を一部内部に貫通して保存し、海水圏のない創生期の地球、他の天体内部における動的VLS物質循環も 説明できる。本モデルでは、地球年齢を示す岩石鉱物が存在したい事が説明できるので、地球外の岩石鉱物形成には、この地球型火成岩形成は特異的である。地球は、海水圏と地殻によるマグマ性火山過程であるが、無水圏の地球外天体では衝突時に内部に蓄積された軽元素等が天体間の重力で上昇するイオ型火山性過程で循環する。本モデルからして、社会的利用した廃棄物の処理は、停止型でなく循環とする事が循環地球から示唆される。
S3:火成作用と流体
  • 熊谷 仁孝, 川本 竜彦, 山本 順司
    セッションID: S3-01
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    一ノ目潟火山は、東北日本弧の背弧側に位置し、捕獲岩について多くの研究がなされている。一方、捕獲岩中の流体包有物についてはCO2-H2O流体包有物が報告されているが、詳細は不明である。サンプルは、角閃石を含むスピネルレールゾライト、もしくはスピネル—斜長石レールゾライトで、流体包有物はOl, Opx, Cpx中に存在し、特にOpxに多く見られる。ラマン分光法によって液体包有物中の相同定を行ない、マイクロサーモメトリーを用いて流体包有物の塩濃度、流体のH2O/CO2比、および二酸化炭素の密度による平衡深度を推定した。流体包有物の塩濃度とH2Oモル比から、流体包有物と共存したマグマの H2OとCO2量を、シリケイトメルトのH2O-CO2溶解度モデルを用いて推定した。さらに、ClのマグマとCO2-H2O流体間の分配係数を用いてマグマ中の塩素濃度を推定した。  
  • 栗谷 豪, 木村 純一, 大谷 栄治, 宮本 英昭, 古山 勝彦
    セッションID: S3-02
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    中国北東部・五大連池火山の火成活動の起源を明らかにする目的で、1719–1721 年の玄武岩を対象に研究を行った。試料は約5%のカンラン石微斑晶を有し、それらはマグマの減圧脱水に伴うリキダス上昇で結晶化したと推定される。そこで、カンラン石と石基ガラスの組成を利用して結晶化温度を計算した結果、1250-1260℃と推定された。この温度はリソスフェリックマントルの推定温度よりもずっと高いことから、マグマはさらに深部のマントルを起源とすることが分かった。中国北東部の長白山地域の玄武岩については、停滞スラブ内の堆積物の影響を受けたマントル遷移層に由来する含水マントルプリュームを起源としていると考えられているが、五大連池の玄武岩は、長白山と同様の地球化学的特徴をもち、また直下の遷移層が長白山と同様に水に富んでいることから、長白山と同じくマントル遷移層から上昇した含水マントルプリュームを起源としている可能性がある。
  • 中村 仁美, 岩森 光
    セッションID: S3-03
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    スラブ起源流体の寄与を考慮したマントル融解条件を推定することで,マントルの温度構造を求めることができる.


  • 浜田 盛久, 藤井 敏嗣
    セッションID: S3-04
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    火山岩中の無水含水鉱物は、ppmオーダーの微量の水素をOH基として含み、それをメルト中の水の量や挙動の指標として用いることができる。本研究では、マグマが水に乏しい場合に、斜長石がどの程度水素を含むのかを明らかにするため、インド洋の中央海嶺玄武岩の斜長石のOH含有量と、斜長石中のメルト包有物の含水量の分析を行った。分析の結果、斜長石のOH量は60 wt. ppm H2O以下であり、メルト包有物の含水量は約0.05 wt.%であった。この場合、斜長石-メルト間の水素の分配係数は、約0.1である。著者らの先行研究によって、メルトの含水量が増加するにつれて、斜長石-メルト間の分配係数が約0.1(無水に近い場合)から約0.005(含水量5 wt.%)へと減少する傾向が確認されていたが、本研究では、水に乏しい天然試料を用いて、その傾向を確かめた。
  • 高橋 栄一, 浜田 盛久, 潮田 雅司, 朝野 健太
    セッションID: S3-05
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    マグマ含水量は爆発的火山噴火の要因となる以外にも火山活動様式や岩石の組織生成に深く関わりがある。我々は、伊豆大島・三宅島・富士火山に着目して鉱物に含まれるOH、メルト包有物、斑晶組み合わせの実験的再現から島弧玄武岩マグマの含水量とその火山活動に与える影響を研究した.伊豆大島、三宅島、富士火山いずれにおいても深さ10km以深のマグマ溜りにおいて玄武岩マグマは3-5wt%の含水量を持つ。地殻浅部のマグマ溜りでは飽和含水量が低下するためマグマ含水量も低下する。一般に高含水量玄武岩マグマはAn成分の高い斜長石斑晶30vol%以上の過斑晶の岩相を示す。
  • 石橋 秀巳, 小竹 翔子, 金山 恭子, 浜田 盛久, 鍵 裕之
    セッションID: S3-06
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    小笠原弧の形成初期に噴出・水中急冷されたボニナイト質ガラス(48-44Ma)および玄武岩質ガラス(44-38Ma)について、放射光Fe-K端XANES分析によってFe3+/∑Fe比を定量し、その酸素フュガシティ(fO2)を見積もった。その結果、それぞれ0.2-0.25および0.18-0.22のFe3+/∑Fe比を得た。この比から見積もったΔQMF値(quartz-magnetite-fayalite bufferからのlog fO2の値のズレ)はそれぞれ1-1.7および0.6-1.2となり、ボニナイト質ガラスの方がやや酸化的であった。しかし、結晶分別の影響を補正したΔQMF値を推定すると0.4-1.1および0.4-0.8となり、両者のfO2に大差が見られず、またMORBのそれに比べて系統的に酸化的であることがわかった。この結果から、島弧マントルのfO2発達過程について議論する。
  • 松本 恵子, 中村 美千彦
    セッションID: S3-07
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    激しい爆発的噴火(プリニー式噴火)である桜島の大正噴火(1914–15年)軽石中に,磁硫鉄鉱(Po)の分解反応組織を見出した.Poの多くは斑晶鉱物に包有されているが,メルトに接しているものの中にはその一部がスポンジ状の鉄酸化物へと反応しているものがあった.EPMA分析の結果,この鉄酸化物の大部分は磁鉄鉱(Mt)であることが分かった.しかしこのスポンジ状MtはTiをまったく固溶しておらず,メルトからのTi拡散が見られないため、マグマ温度で4時間以上メルトと接していない.また,PoとMtの安定領域境界のfO2を熱力学計算によって算出すると,950ºC~1050ºC・1bar下でNNO +2.6 log unit前後であったことから,この反応は高いfO2環境下である火道浅部で,すなわち噴火の際に形成されたと言える.Poの脱硫化反応速度は非常に高速なマグマ上昇速度計に応用できる可能性がある.
  • 薛 献宇, 神崎 正美
    セッションID: S3-08
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    水のケイ酸塩メルト/ガラスの性質へ及ぼす効果を理解するには、水の溶解機構の解明が必要不可欠である。Ca-Mgケイ酸塩メルト/ガラスにおいては、我々のこれまでの研究から、水は分子H2Oのほか、メルトのネットワーク構造や粘性に相反の効果を及ぼすSiOHとfree OH (e.g. MgOH)種として存在することが分かった。一方で、アルカリケイ酸塩系においてはfree OHの存在は未だに議論されている。本研究では1H MAS NMRと29Si-1H と 23Na-1H二重共鳴NMRの組み合わせにより、Naケイ酸塩メルト/ガラスには水は主にメルト構造の重合度や粘性を下げる効果のあるSiOH種及び分子H2Oとして存在することを明らかにした。
  • 吉村 俊平, 中村 美千彦, 圦本 尚義
    セッションID: S3-09
    発行日: 2012年
    公開日: 2014/06/10
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    ピストンシリンダ型高温高圧発生装置を用い,1200 °C・10 kbarの条件における花崗岩質メルトとCO2に富む流体との間の炭素同位体分別実験を行った.気体質量分析計を用いて同位体組成を分析した結果,Δf-m= +0.8‰の同位体分別が認められた.また,赤外分光分析により,メルト中のCO2溶存化学種としては,CO2分子とCO32-の両方が確認された.炭素同位体分別は,CO2分子の寄与とCO32-の寄与の線形結合によってあらわされた.
R1:鉱物記載・分析評価
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