抄録
マントルの660km 付近では沈み込むスラブから剥離する可能性がある。この剥離が起こるか否かは海洋地殻と周囲のマントルの塑性強度によって決まるが、マントル深部条件での関連物質の塑性強度は分かっていない。このため、海洋地殻の主要鉱物メージャライト(Mj)と周囲のマントルの主要鉱物リングウッダイト(Rw)の変形実験を圧力約17GPa、温度1473-1673K の条件下で行い、両鉱物の相対塑性強度を調べた。実験ではSPring-8、BL04B1 に設置のSPEED-MkII-D を用い、MjとRwを同一の温度、圧力、差応力条件下で変形した。その結果をもとに現実のマントルの歪速度に外挿すると、Mj の塑性強度はRw のそれと同程度かそれ以下であった。現実のマントルでも本実験での変形機構と同一の変形機構が働くと仮定すると海洋地殻成分の剥離は起こらないことが示唆される。