火星隕石に含まれる一部のカンラン石は強い衝撃作用により黒色化しており,元のカンラン石とは異なる特性を示す.これはカンラン石中に晶出した平均20 nm程度の大きさの金属鉄や磁鉄鉱のナノ粒子が原因であるが,これらの鉄ナノ粒子の形成過程や衝撃圧・温度との関係は詳しくわかっていない.我々はこれまでに,レールゾライト質シャーゴッタイトNWA1950隕石の電子顕微鏡による詳細な観察により,新たな鉄粒子の存在形態を報告した.そこで本研究ではよりマクロなスケールで観察を行い,鉄粒子とカンラン石の微細構造の存在形態を明らかにした.カンラン石では鉄粒子の存在と共に,カンラン石の高圧相の可能性があるラメラ状領域などが存在し,鉄粒子の形成にはこれらの高圧鉱物が関与している可能性が示唆された.それらの領域の関係を今後も詳細に調べることで鉄粒子の形成過程の解明や衝突現象への新たな指標の付与ができることが期待される.