日本鉱物科学会年会講演要旨集
日本鉱物科学会 2013年年会
選択された号の論文の212件中1~50を表示しています
J2:地球内部・高圧化学(共催:日本地球化学会)
  • 米田 明, 福井 宏之, 渡辺 了
    セッションID: J2-01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    アンチゴライトは沈み込み帯における地震火山活動をコントールする鉱物として注目されており、その結晶弾性は地震波速度異方性を解釈するために重要である。すでにブリリュアン散乱法(BS)で測定されているが[1]、疑問点が多々あるのでX線非弾性散乱法(IXS)による結晶弾性測定を試みた。
  • 松井 正典, 佐藤 友子, 船守 展正
    セッションID: J2-02
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    我々は今回、第一原理計算に基づいて、cristobalite-He I及びII相の結晶構造と圧縮挙動、エネルギー的安定性、He含有量を検討し、可能な高圧実測データと比較したのでその結果を報告する。いくつか可能な構造モデルを試みた結果、クリストバライトIIとHeが別々に存在する系よりも、高圧下でのエンタルピーが低い(より安定な)ものを2種見出すことができた(それぞれモデルH及びモデルLと呼ぶ)。モデルHとLの両者とも、それぞれcristobalite -He I及びII相の高圧下における安定性、相転移、実測の格子定数の圧力依存、粉末X線強度データを良く再現できることを見出した。
  • 舘野 繁彦, 坂田 周平, 平田 岳史, 廣瀬 敬
    セッションID: J2-03
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    近年の高温高圧発生および放射光技術の進歩は地球深部物質の相関係や物性を明らかにし、地震波観測との比較から、地球内部の層構造についての理解は飛躍的に進んだ。一方で、マントル・核の化学的進化を議論する上で必要な元素分配などの地球化学的データは極めて乏しい。地球中心条件の高温高圧発生が可能なレーザー加熱ダイヤモンドアンビルセル装置を用い、かんらん岩とMORBの融解実験を核マントル境界の圧力条件まで行い、回収試料に対しFE-EPMAを用いて組織観察及び主要元素の定量、加えてLA-ICP-MSによる微量元素分析を行った。各物質の融解相関係を決定し、リキダス相鉱物-部分溶融液間の主要元素/微量元素の分配を調べた。
  • 東 真太郎, 片山 郁夫, 中久喜 伴益
    セッションID: J2-04
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    下部地殻と上部マントルの強度比を決定することは地球型惑星のテクトニクスを議論する上で重要な鍵になる。地殻とマントルの強度比を直接決定するために固体圧式変形装置で、斜長石とかんらん石を用いた2相系の変形実験を行った。実験条件は圧力2GPa、温度600–1000℃、乾燥条件で行われた。さらに実験結果を用いて数値計算を行い、金星表面のテクトニクスを考察した。全ての実験条件でオリビンの方が大きい強度を持つことがわかった。これはpower-lawから予想される結果とは異なり、低温ではPeierlsメカニズムが支配的になっていることが示唆される。実験結果から金星内部のレオロジー構造を推察すると、下部地殻と上部マントルの強度比が大きく、デカップリングを起こす可能性が考えられ、数値計算からは地殻とマントルの強度差が大きくなればなるほど、モホにおいて地殻の移動速度は抑制されることがわかった。
  • 赤荻 正樹, 横山 つかさ, 糀谷 浩
    セッションID: J2-05
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    空気のバブリングによる酸化落下溶解熱量測定法を、FeO-SiO2系高圧相に適用し、各相のエンタルピーを測定した。この結果と各相の標準エントロピーを使って、Fe2SiO4とFeSiO3の高圧相転移の相境界線を熱力学的に計算し、高温高圧実験の結果と比較した。
  • 糀谷 浩, 井上 徹, 赤荻 正樹
    セッションID: J2-06
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    地球マントルの深さ660 km付近での地震波不連続の要因と考えられているポストスピネル相転移の相境界のクラペイロン勾配は、マントル対流の様式に影響を与える重要なパラメータである。本研究では、Mg2SiO4リングウッダイト, MgSiO3ペロブスカイトおよびMgOの落下溶解熱測定を行うことにより、ポストスピネル相転移に伴うエンタルピー変化を再決定した。さらに、新たに得られた相転移エンタルピー値を用いることにより、ポストスピネル相転移境界線を熱力学的に再検討した。相転移境界のクラペイロン勾配は1873 Kにおいて-1.2±0.3 MPa/Kと求められた。ポストスピネル相転移がマントル対流に対して障害となる効果は小さいと考えられる。
  • 松影 香子
    セッションID: J2-07
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    大陸クラトン下のマントルは海洋やオフクラトンのマントルに比べてMgとSiに富むという特異な化学組成を有している。本研究では、このような特異な化学組成をもつクラトンマントルが含水条件下で形成したのではないかと考え、FeOやアルカリ元素を含む主要10成分からなるパイロライトの部分融解実験を上部マントルの広い圧力範囲で行った。実験結果からクラトンマントルは含水部分融解による単純な融け残り岩であると考えられる。クラトンのマントルでは海洋地域に比べて5%以上の地震波高速度異常や2ケタ程度の低電気伝導度といった測地学的異常も報告されている。クラトンマントルが含水条件で大規模部分融解をし、H2O成分がほぼすべてメルトに分配されて系から抜き去られ、結果として現在、非常に無水であると考えると、これらの測地学的異常も包括的に解釈できそうである。
  • 井上 徹, 林 晃平, 圦本 尚義
    セッションID: J2-08
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    沈み込むスラブ中には各種の含水鉱物が存在し、その含水鉱物によって地球深部に水が供給されていると考えられている。一方、現在の報告では高圧含水鉱物はマントル地温勾配よりも低い温度のみに存在すると考えられている。また沈み込むスラブ中にもAl2O3成分が含まれており、下部マントルにもAl2O3成分が含まれていることはまず間違いない。Alは3価のイオンであり、1価のHとカップリングすることによって、マグネシウムケイ酸塩中のMg2+イオン、Si4+イオンと置換し、高圧含水鉱物中の含水量を変化させることが予想される。そして、その置換反応は高圧含水鉱物の安定領域にも影響を及ぼすと考えられる。そこで本研究では、高圧含水鉱物に対してAlの効果による含水量の影響及び含水相の安定領域について調べるために高温高圧合成実験を行った。
  • 鈴木 敏弘, 今井 崇暢, 平田 岳史, 横山 隆臣
    セッションID: J2-09
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    Fe-Ni-S系の高圧融解実験を10~25GPaの範囲で行い、親鉄性元素のFeNi合金-硫化物メルト間の元素分配係数を測定した。高温高圧実験には川井型マルチアンビルを用いた。回収した試料の主成分元素はEPMAで測定し、微量元素濃度はフェムト秒レーザーを用いたLA-ICP-MSで測定した。今回測定した元素のうち、Geの分配係数は圧力の増加に伴い上昇する傾向が観察された。しかし、他の元素については、10~25 GPaまで圧力を変えても、分配係数に明瞭な変化は認められなかった。常圧で測定されている分配係数と比較した場合、Co、Ni、Pd、Os、Ir、Pt、Auについては、高圧で測定された分配係数もほぼ同じ値を示しており、圧力依存性は小さい事が明らかになった。しかし、Mo、Ru、Rh、W、Reの分配係数は、常圧での値と比べると明らかに低い値をし、Cuは常圧での値よりも高い分配係数を示した。
  • M. Satish-Kumar, Takashi Yoshino, Shogo Mizutani
    セッションID: J2-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    Carbon is the fourth most abundant element in the solar system. It has an important role in the melting phase relations of mantle rocks and metallic core. However, our understanding of carbon isotopic composition of deep Earth is very limited. Here we review the recent results of experimental determination of partitioning of carbon isotopes at high-pressure high-temperature conditions.
  • 遠山 知亜紀, 村松 康行, 角野 浩史, 山本 順司, 兼岡 一郎
    セッションID: J2-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    キンバーライトはマントル起源の岩石で、揮発性元素に富む特徴を持つ。また、ハロゲン元素は揮発性元素で、地殻やマントル、海水、間隙水、堆積物で異なる元素比を持つ。このことから、キンバーライトのハロゲン元素組成とその特徴を調べることで、キンバーライトマグマが生成するマントルでのハロゲン元素の分布やその起源に関する知見を得られる可能性がある。そこで、本研究は6カ国で採取されたキンバーライトとその捕獲岩中のCl, Br, I濃度の分析を行った。その結果、キンバーライトは産出地域や噴出年代に関係なくI/Br比から2つのグループに分類でき、一つはマントルのI/Br比を、もう一つは海水起源のハロゲン元素の影響を受けたI/Br比を示していることが分かった。
  • 川本 竜彦
    セッションID: J2-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    共同研究者とともに、フィリピン・ピナツボ火山1991年噴火のハルツバージャイト捕獲岩のカンラン石に多数の塩水包有物を初めて確認したのは、2008年の3月だった。その後、当時大学院生の熊谷仁孝さんのがんばりで約5%のNaClが含まれると結論した。ピナツボはルソン弧の火山フロントに位置し、比較的若い南シナ海が西から沈み込むのに伴って活動する。流体包有物は塩水と炭酸塩鉱物よりなり、若い海洋プレートから塩水+炭酸ガスの流体がマントルウェッジに供給されると結論した(Kawamotoほか, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 2013)。マントルウェッジの捕獲岩から塩水が報告されたのは初めてである。同様に若いプレートが沈み込む西南日本前弧で湧きだす、マントルのヘリウムの特徴を持つ湧水も塩と炭酸ガスを含むものがあり、これら有馬型熱水も海洋プレートから来ていると推定する。
  • 篠崎 彩子, 鍵 裕之, 平井 寿子, 大藤 弘明, 岡田 卓, 中野 智志, 八木 健彦
    セッションID: J2-P01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    水素は還元的な深部マントルで存在している可能性が指摘されている。これまでのMg2SiO4-H2系の高温高圧実験から、水素流体が共存する条件ではforsteriteが分解し、periclaseが生成することが示された。本研究では水素がenstatiteの安定性、相関係に与える影響を明らかにすることを目的としてLHDACを用いた高温高圧実験を行った。3.1 GPaから13.8 GPa, 1500 Kから2000 Kでの加熱後のXRD, Ramanからenstatiteが分解し、periclase, forsterite, coesite/stishoviteが生成することが明らかになった。SEM、TEMによる回収試料の組織観察から、SiO2成分が高温下で流体相へと溶けた後、、coesite/stishoviteが再結晶化した可能性が示された。
J4:水―岩石相互作用 (共催:日本地球化学会)
  • 三好 茜, 小木曽 哲
    セッションID: J4-01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    北海道神居古潭帯岩内岳超塩基性岩体で採集した蛇紋岩試料について、岩石記載と鉱物化学分析から、蛇紋岩化の進行に伴う鉱物反応を明らかにした。その結果、蛇紋岩化は2段階で進行し、2段階目における斜方輝石の蛇紋石化によるシリカ成分の供給が、磁鉄鉱の形成を促進したことがわかった。
  • 荒井 章司, 秋澤 紀克
    セッションID: J4-02
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    Crは典型的な難融性元素であり,クロマイトは典型的なマグマ性鉱物である。岩石中の初生クロマイトは熱水環境下でCrを放出し,近くに含Cr熱水鉱物を生成するとされる。これらでは,クロマイトは二次鉱物のCr供給源である。熱水から晶出したと解釈されるクロマイトをオマーン・オフィオライトにおいて発見した。層状ガブロを置換するアノーサイトに富むディオプシダイトは,ほかに,ウバロバイト,クロマイト,緑泥石,チタナイトを含む。ウバロバイトとクロマイトは一部骸晶的で,同心円的で周期的な累帯構造を示す。また,ウバロバイトのCrに富むゾーンのみ自形細粒のクロマイトを包有する。緑泥石が粗粒クロマイトと連晶様を呈する。これらの事実は,クロマイトとウバロバイトが同時に晶出したことを示唆する。Crが比較的高温の熱水に相当量溶け込み移動し,クロマイトを晶出させる。すなわち,熱水性クロマイトが存在する。
  • 大谷 栄治, 富田 東希生, Bjorn Mysen, 鈴木 昭夫
    セッションID: J4-03
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    鉄水素化物は1.5GPa以上の圧力・高温で、蛇紋岩化作用にともなって生じる。この鉄水素化物の生成反応によって、水素が消費され、深部地殻における水素やメタンの生成を阻害する。そして、深部生命の生息度度の限界を決めている可能性がある。
  • 横山 由佳, 高橋 嘉夫
    セッションID: J4-04
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    方解石及び菱鉄鉱が3価のヒ素である亜ヒ酸を溶液中から取り除く除去機構について調べた。方解石に比べて100倍のヒ素が分配する菱鉄鉱には、3価の亜ヒ酸が菱鉄鉱表面に外圏錯体として吸着する。一方で、方解石に分配したヒ素は5価のヒ酸に酸化され、かつ方解石の結晶内部へと取り込まれる。ヒ素汚染地下水中におけるヒ素の主要な化学種は3価の亜ヒ酸であるため、そこでより強くヒ素の移行を制限できるのは菱鉄鉱である。しかし、外圏錯体の吸着反応による固定化であるため、地下水への脱着も容易に起こると考えられる。一方で方解石は、ヒ素を結晶内部に取り込むことができるため、方解石が溶解するまでヒ素を留めておく事ができる。さらに、酸化的環境で溶解する菱鉄鉱とは異なり、方解石は酸化還元環境の変動を受けにくいことから、一度方解石に固定されたヒ素は、その後の環境汚染を引き起こすリスクがより低いと考えられる。
  • 奥山 康子, 船津 貴弘, 高本 尚彦
    セッションID: J4-05
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    CO2地中貯留に伴う貯留システムの変形や破断、また貯留流体の漏洩という動的応答現象のナチュラル・アナログとして松代群発地震をとりあげ、現象の原因となった深部流体の地球化学的特性を検討した。原因流体は、松代地域での深部試錐でえられた地下水組成より高塩分濃度と推定される。原因流体の組成は、CO2地中貯留に伴う岩盤の動的応答を探る流体流動-岩石力学連成シミュレーションにて必須のものである。
  • 渡邊 隆広, 土屋 範芳, 井上 千弘, 北村 晃寿, 駒井 武, 山崎 慎一, 山田 亮一, 平野 伸夫, 岡本 敦, 細田 憲弘, 奈良 ...
    セッションID: J4-06
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    地震・津波等の災害が多発する日本において、適切かつ持続可能な将来計画を築くためには、過去の巨大津波による災害規模を明らかにし、将来において発生が予想される大規模災害に備えることが必要である。過去の津波堆積物を検出・分析することが重要であるが、これまでの研究において、「砂層の検出は行われているが、より内陸に到達する泥質の津波層を検出することができない」「時間解像度が低く、特に津波被害の回復過程が復元できない」の2つの解決すべき問題があり、新たな分析・解析手法が求められている。本研究では、これまでにほとんど報告例のない無機化学データをもとに津波堆積物の化学判別を試みた。研究試料として、2011年3月の東北地方太平洋沖地震により発生した津波堆積物に加え、約1100年前の貞観津波、約2000年前の弥生津波堆積物、および静岡平野(大谷低地)において採取された約3000年前の津波堆積物を用いた。
  • 高橋 嘉夫, 宮地 亜沙美, 田中 雅人
    セッションID: J4-07
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    地球表層で金属陽イオンと錯生成する酸素配位の配位子として、水酸化物イオン以外に炭酸イオン、リン酸イオン、カルボン酸イオンなど(=オキソ酸イオンとする)が重要である。これらはいずれも酸素配位のハードな配位子であるが、どんな陽イオンが水酸化物イオンとオキソ酸イオンのいずれを好むかという点について、これまで明確には議論されてこなかった。しかし、空気平衡の炭酸イオン存在下で様々なイオンの溶存種を計算すると、イオン半径の大きなイオンほど炭酸イオンを好む傾向があることが分かる。本研究ではこの系統性について、熱力学的パラメータおよび量子化学計算から検討した結果を示す。
  • 徳永 紘平, 横山 由佳, 川口 慎介, 高橋 嘉夫
    セッションID: J4-08
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    酸化還元状態(Eh: 水素電極を基準とした場合の酸化還元電位)は、元素の価数、ひいてはその挙動を大きく支配する物理化学的な環境パラメータであるが、熱水環境のような極限環境や過去の海洋環境でのEhを絶対的に推定する方法に確立されたものがある訳ではない。本研究では、水圏環境でのEhを推定する手法として、バライト中に取り込まれたセレンを用いたEh計を開発した。バライトへのセレンの価数別の共沈実験の結果、バライト中に取り込まれたSeの価数比は溶液中のSeの価数比を反映することが明らかになった。このことは、バライト中に取り込まれたSeの価数比を用いて、沈澱時の溶液中の酸化還元状態の情報が得られることを示している。これら室内実験における傾向は天然においても確認されており、バライト中に取り込まれたSeの価数比を用いることで過去の酸化還元状態の復元が可能であることが明らかになった。
  • 横山 正
    セッションID: J4-09
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    岩石間隙水中の溶存シリカの拡散特性の理解は,水-岩石相互作用を考える上で重要である.砂岩(2種類)や流紋岩を用いて,25℃にて透過拡散試験による溶存シリカの有効拡散係数Deの測定を行った.また,K+とClDeも測定して各元素のDeの比較を行った.さらに,溶存シリカの化学形態がDeに及ぼす影響を評価するために,pH 6 (電荷ゼロのSi(OH)4がほぼ100%)とpH 11(SiO(OH)3や多量体が存在)における実験も行った.岩石からのシリカの溶解の影響を補正して得られた溶存シリカのDeは,K+やClのそれよりも約2~3倍小さかった.溶存シリカのDeが小さいのは,それぞれの元素のバルク水中の拡散係数の違いと,岩石内部におけるシリカの沈殿が影響している可能性がある.また,pH 6と11において得られたDeの違いは小さく,溶存シリカの電荷の違いや多量体の存在の影響は認められなかった.
  • 柳澤 教雄
    セッションID: J4-10
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    400~500℃での超臨界温度領域でのシリカの溶解挙動や圧力依存性の解明、この温度領域からの地熱利用を想定して、水―シリカガラス-鉄の反応実験を行い、シリカガラスの溶解速度、ガラス中への水和速度、これらの活性化エネルギーの評価、鉄試料の変化や鉄によるシリカの溶解への影響などを評価した。
    シリカガラスの溶解速度は0.5 to 9.9 x 10-10m/sで温度、圧力に従って増加し、100ミクロン程度の水和層を形成した。この反応の活性化エネルギーは、水和の拡散係数からは約60KJ/molを示し、石英ガラス表面ので溶解速度の活性化エネルギー(60.9~64.9 kJ/mol)に近く、表面反応が律速過程であることが示された。さらに鉄板を系に加えた場合、シリカガラスの溶解速度は平均2×10-10m/s速くなり、鉄板表面に鉄かんらん石 (Fe2SiO4)が生成された。
  • 佐久間 博, 市來 雅啓, 河村 雄行
    セッションID: J4-11
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    地殻に存在する水流体は、液体から超臨界状態にあり、その物性は地殻の電気伝導度・地震波速度・鉱物の溶解度と大きな関連があり重要である。本研究では、超臨界状態にあるNaCl水溶液の構造と物性を、古典分子動力学(MD)計算から明らかにし、密度・体積弾性率・誘電率・電気伝導度を原子スケールから理解することを目的とした。計算は温度573 K < T < 2000 K, 圧力0.1 GPa < p < 2 GPa, 塩濃度 0.6 wt% < c < 1.8 wt%の範囲で実施した。この領域における超臨界流体の物性の変化を、動径分布関数や配位数などの原子スケールの構造から考察する。
  • 澁江 靖弘
    セッションID: J4-12
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    高温・高圧条件における塩化マグネシウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の熱力学的性質(特に,塩化カルシウム水溶液の性質)は,塩分濃度の高い天然の熱水溶液を考える上で重要になってくる。この辺りの事情について簡単に触れる。そして,250℃,50 MPa,4 mol/kgまでの温度・圧力・濃度領域で標準状態における塩化マグネシウムと塩化カルシウムの部分モル定圧熱容量と部分モル体積の計算式を求めた。部分モル定圧熱容量の計算式には九つの経験的パラメータ,部分モル体積の計算式には六つの経験的パラメータを使用した。
  • 石山 沙耶, 安東 淳一, 中井 俊一, 太田 泰弘
    セッションID: J4-P01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    地殻流体は沈み込み帯で生じている内陸地震に密接に関係すると考えられているが,流体を起因とする岩石破壊現象に関しては,その素過程を地質学的な証拠に基づいて研究した例は少ない.本研究で我々は日本3大カルストの1つである平尾台において,大理石からなるカタクレーサイト様の破砕岩が露出することを発見した.この破砕岩は平尾台中央部において2ヵ所で観察され,円形,また扁平状の特徴的な分布を示す.この破砕岩とその近傍の大理石にのみ多量の流体包有物が認められる事から,この変形には地殻流体が関与した事が明らかとなった。また,破砕岩を構成する方解石の変形微細組織観察及び化学組成分析,流体包有物の均質化温度測定を行った結果,高温高圧の流体が関与して引き起こされた破砕である可能性が高いことも明らかとなった.また,変形に関与した流体は花崗岩マグマに関与する流体である可能性が考えられる.
  • 山口 海, 上原 誠一郎
    セッションID: J4-P02
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    蛇紋岩の仮晶組織は、その形成過程を考察する上で重要な組織である。本研究では福井県大島半島の蛇紋岩について、偏光顕微鏡観察、X線回折分析、SEM-EDS分析を行い、代表的試料を選んでTEMを用いた微細組織観察を行った。当地域の蛇紋岩は網目状組織及び脈状組織を主とする。脈状組織の中心部は磁鉄鉱、polygonal serpentineから、脈の外側は蛇紋石、パイロオーロ石からなる。脈状組織付近の網目状組織はリムが複数層からなり、外側リム、外側/内側リム境界、内側リムに分帯され、数度にわたる形成環境の変遷が示唆される。さらに、外側/内側リム境界付近、コア/リム境界付近には、粒径300 nm程度のアワルワ鉱(Ni3Fe)が微細粒子として多数存在し、還元的な形成環境を示す。本地域の蛇紋石はAl, Ni, Feなどが少なく、蛇紋岩化の際にFe, Niが放出され、金属鉱物を形成したと考えられる。
  • 橋本 崇史, 林 謙一郎
    セッションID: J4-P03
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    アタカマ塩湖は世界最大の塩湖の一つであり,超乾燥地域である。乾燥によって厚く覆われた塩類皮殻のかん水中におよそ2,200 ppm の高濃度リチウムを含有している.塩湖の形成モデルによれば,塩湖に供給される水は後背地からの降水や雪解け水が主体である.それらが伏流水として流入する過程で蒸発を受け,その組成を高濃度のかん水へと変化させていく.塩湖のリチウムの起源については,塩湖周囲に広がる火山岩類に含まれるリチウムが伏流水により溶脱されたとする火山岩起源説及び北部に存在する地熱帯の温泉水も含めた伏流水が関係しているとする説がある.塩湖の高濃度リチウム起源について考えるためには,伏流水の経路となる後背地の地質が重要となってくる.しかし,この塩湖周辺に分布する岩石の化学組成に関する研究は乏しい.そこで,現地調査を行い岩石記載とそれら岩石の化学分析を行い高濃度リチウムかん水の起源に関する考察を行った.
  • 渡邊 隆広, 奈良 郁子, Nathalie Fagel, 土屋 範芳, 井上 千弘, 山崎 慎一, 松中 哲也, 中村 俊夫, 箕浦 幸治 ...
    セッションID: J4-P04
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    チベット高原南部に位置するプマユムツォ湖には、60 m以上の湖底堆積層が存在していることが示されている。プマユムツォ湖において長さ約4mの柱状堆積物が4本採取されている。湖底堆積物の放射性炭素による年代決定に加えて、物理量や化学組成等を分析することにより、連続的な環境変動の復元が可能になると期待される。特に、湖底堆積物中の粘土鉱物組成および地球化学組成は、湖周囲の水循環や乾湿変動の指標になることが報告されており、重要な古環境プロキシである。本研究では、PY608E-PCについて放射性炭素による年代決定、無機化学組成、粒度組成、および粘土鉱物組成をもとに、過去約12500年間のアジアモンスーン活動とチベット高原における水循環変動について報告する。
  • 古川 登
    セッションID: J4-P05
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    NaCl, CaCl2 溶液による菫青石の斜長石への置換反応が 生じる溶液の下限濃度を求めた.SEMによる観察で,斜長石結晶が生成されたことが確認された試料は,溶液出発物質の組成及び濃度がCa/(Na+Ca)>0.5で0.01mol/lの試料であった.しかし,実験後の溶液のICP分析では,溶液出発物質の濃度が0.001mol/lの試料でも,微量ではあるが,Mg,Al,Siが含まれており,菫青石の溶解反応が生じていたと考えられる.
S1:火成作用と流体
  • 中村 仁美, 及川 輝樹, 下司 信夫, 松本 哲一
    セッションID: S1-01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    フィリピン海プレートの過去の運動については,理論的復元や広域地質に基づく研究などあるが,現在のスラブは,関東地域下の一部で非地震性になっており,その構造は不明瞭である.一方,島弧火山岩の化学組成は,スラブからの寄与や,マントルでの生成条件を介し,スラブの分布とその変遷を記録している.本研究では,関東山地に産する火山岩のK-Ar年代を決定することで,火山フロントの移動と,その原因としてのテクトニクスとマントル構造の変遷を議論する.
    周辺地域の火山活動史を含めて考えると,約3Maに,火山フロントが現在の位置に移ったことが分かった.オイラー極が北へ移り,フィリピン海プレートの進路が北西へ変化したことで,スラブの寄与が西へ及んだと考えられる.これに伴い,マントルウェッジがより冷たくなり,フィリピン海スラブおよび太平洋スラブからの脱水深度が変わり,マントル構造とメルト分布が大きく変化したと推定される
  • 浜田 盛久
    セッションID: S1-02
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
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    本発表では、島弧の火山フロントの火山の一つである伊豆大島火山から噴出する島弧ソレアイトマグマを例として、過去40,000年間噴火史を通じた噴出物の化学組成と含水融解実験の既報データに比較・検討することにより、島孤ソレアイトマグマの分化条件について再検討を行う。同一の親マグマから伊豆大島火山の分化マグマの組成バリエーションを導くためには、メルトが水に飽和しており、深度(圧力)に応じてメルトの含水量がコントロールされていることが必要である。すなわち、水に富む深部マグマ溜まりと水に乏しい浅部マグマ溜まりでそれぞれ結晶分化作用が起こっている。加えて、異なる深度のマグマ溜まりで導かれたマグマが噴火前にマグマ混合することも必要である。
  • 石橋 秀巳, 鍵 裕之, 阿部 なつ江, 平野 直人
    セッションID: S1-03
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、プチスポットに産する玄武岩質ガラスについてFe-K端μ-XANESによるFeの価数状態分析を行い、プチスポットマグマの酸素フュガシティ(fO2)を見積もった。分析は、高エネルギー加速器研究機構Photon FactoryのBL4Aの装置を用いて行った。分析試料は、東北地方三陸沖約800kmの太平洋プレート上に位置するプチスポットSite-Bでドレッジされたスコリア中に含まれる急冷ガラスである。今回、スコリア6試料について分析を行ったが、いずれもFe3+/Fetotal~0.37の値を示した。この値は、ガラス-オリビン間のみかけのFe/Mg分配係数から求めたFe3+/Fetotal比とほぼ一致する。この値から見積もったfO2条件は、QMF+2.3程とMORBより酸化的で、むしろ島弧マグマの条件に近い。この結果に微量元素組成を加え、プチスポットマグマの形成過程について議論する。
  • 上木 賢太, 岩森 光
    セッションID: S1-04
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究はUeki and Iwamori (2013)で提示された多成分多相系の相平衡計算のための熱力学モデルを拡張し様々な圧力や全岩組成でのマグマ生成の数値計算を行うことを目的として、新たにモデルの構築を行った。新しいパラメーターはスピネルレルゾライトの安定領域 (1~2.5 GPa) に適用することができ、高圧ほどソリダス温度が上昇・温度-溶融度曲線の傾きが急になる・メルトがSiO2に乏しくなるというスピネルレルゾライトの溶融の圧力依存性を再現することができた。さらに、これまで実験が報告されていない海嶺下に対応する枯渇した組成のスピネルレルゾライトのソリダスやメルト生成率の圧力変化の計算を行った。
  • 薛 献宇, 神崎 正美
    セッションID: S1-05
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    CO2のケイ酸塩メルト/ガラスの性質へ及ぼす効果を理解するには、その溶解機構の解明が必要不可欠である。CO2は、分子CO2 と炭酸塩イオン(CO32) の形でメルト中に溶け込んでいることが知られている。しかし、CO32 はどのようにメルト構造に取り込まれているのか、ネットワーク構造へどのような影響をもたらすかは良く分かっていない。本研究ではab initio計算(振動周波数、13C化学シフトテンソル)及びのCO2を含む異なったケイ酸塩組成の急冷ガラスの多核種NMR測定を行なった。計算から、振動周波数と13C化学シフトテンソルは共にCO32-の局所構造に敏感であるが分かった。実験データは、CO32は重合度の低いメルトでは主にネットワークと繋がっていないfree CO32として重合度の高い組成では2つのSi/AlとつながるネットワークCO32 として存在することを示唆する。
  • 無盡 真弓, 中村 美千彦
    セッションID: S1-06
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    新燃岳2011年のサブプリニー式噴火,ブルカノ式噴火の急冷した軽石中に,ナノライトが晶出していることを発見した.ブルカノ式噴火軽石と本質溶岩片中には輝石と斜長石のナノライトが見られるが,より高速なマグマの上昇によって引き起こされると考えられるサブプリニー式噴火の軽石中には,斜長石のナノライトはなく,輝石のナノライトのみが晶出していることが明らかになった.マイクロライトの結晶度・数密度は噴火様式に関係なくほぼ同じであった.このことは,ナノライトの有無や鉱物種,数密度が,マイクロライトでは区別できない,地表付近でのわずかなマグマの脱水状態(減圧速度)の違いを敏感に反映していることを示している.
  • 奥村 聡, シャン・デ・ シルバ, 中村 美千彦, 佐々木 理
    セッションID: S1-07
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    マグマの粘性は結晶量の増加とともに上昇し,マグマが噴火できるか否かを決定づける結晶度や粘性の閾値が存在すると考えられている.しかし実際には,理論的に予測される粘性閾値よりも高い粘性を持つマグマが噴出することも知られている.本研究では,高結晶度の軽石・溶岩(アンデス山脈の計6噴火)中の斑晶組織を,X線CTを用いて3次元的に観察し,その結果を理論・実験的に予測される噴火閾値と比較を行った.重要な観察結果として,35~51vol%の斑晶量の範囲で斑晶サイズ分布の傾きに変化が無いことなどがあげられる.過去の実験から,本研究のマグマは流動中に斑晶破砕が進行すると期待されるが,そのような組織は,明瞭には見られない.これは,マグマ上昇前に気泡が形成されるなどして,斑晶破砕が抑制された可能性を示唆する.そのような気泡形成が高結晶度・高粘性マグマの上昇・噴火を可能にしているのかもしれない.
  • 吉村 俊平, 加々島 慎一
    セッションID: S1-P01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では,顕微ラマン分光法によりケイ酸塩ガラス中のH2OとCO2を定量分析することを試みた.赤外分光およびラマン分光によってH2OとCO2が溶解している玄武岩質ガラスを分析し,両者のスペクトルを比較した.その結果,H2Oについては,3550cm-1のラマンピークの高さと3550cm-1の赤外のピークの高さが,CO2(CO32-として溶解)に関してはラマンの1080cm-1ピークと赤外の1470cm-1のピークが,それぞれ比例していることを確認した.したがって,この比例関係を検量線として確立すれば,ラマン分光によって揮発性成分を分析できる.
S2:岩石―水相互作用
  • 澁江 靖弘
    セッションID: S2-01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー


    塩化マグネシウム水溶液と塩化カルシウム水溶液の熱力学的性質に関する文献値を基にして,温度が0℃から250℃,圧力が50 MPa,濃度が4 mol/kgまでの領域で適用できるPitzer式を求めたので報告する。この式で計算できる性質は,浸透係数,イオンの平均活量係数,見かけの相対モルエンタルピー,定圧熱容量,密度である。今回求めたPitzer式では,Pitzerパラメータの温度・圧力依存性を表すために28の経験的パラメータを使用している。
  • 関口 知寿, 平野 伸夫, 岡本 敦, 土屋 範芳
    セッションID: S2-02
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    海底の熱水噴出孔や地球内部などの高温高圧下において流体は超臨界流体として存在していると考えられる.流体の相状態や臨界点の把握はこのような高温高圧下での反応のメカニズムを解明する上で極めて重要である.本研究では臨界現象の観察と臨界点の決定を目的として,臨界点付近のH2O, CO2, C2H5OH, NaCl水溶液の分光計測を400nmから890nmの波長の光に対して行った.その結果,流体を透過する光の強度は臨界点付近において急激に減少した.また,すべての試料流体において,透過光の強度が最小になるときの温度・圧力はそれぞれの流体の臨界点とほぼ一致した.臨界点の実験値が文献値と比較的よく一致したことから,分光計測を用いた臨界点の測定方法は有効であるといえ,多成分地殻流体の臨界点の測定への応用が期待できる.
  • 石川 慧, 土屋 範芳, 平野 伸夫
    セッションID: S2-03
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    地殻中では含水鉱物や流体包有物中の水,間隙中の水など,様々な形で水が存在しており,プレートの沈み込み帯も,海洋由来の水やマントル由来の水などが存在する環境である.沈み込み帯における地震発生帯の温度は150~350℃程度であり,水は亜臨界-超臨界で存在する熱水である.この領域の水は鉱物粒間に非常に薄い薄膜状の形で存在しており,この薄膜水はバルクの水(自由水)とは違った性質を持つことが知られている.
    本研究では,高温高圧の薄膜水が観察可能なダイヤモンドセルを用いて,様々な温度圧力条件における自由水,金属および人工石英表面の薄膜水の水分子振動スペクトルの測定を行った.
    ラマンスペクトルおよび赤外吸収スペクトルの測定結果より,3400cm-1付近に現れる水のOH伸縮振動が,温度圧力によって変化することが観察された.また,人工石英表面のシラノール基の水素結合の影響による水の構造化も観察された.
  • 藤本 光一郎, 福地 里菜
    セッションID: S2-04
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
     日本粘土学会の標準粘土試料(JCSS-1101b カオリナイト(関白),JCSS-5101 セリサイト(鍋山),JCSS-3501 合成サポナイト(クニミネ工業))について,それぞれ一定量を遊星型ボールミル(Fritsch P-6)によって毎分400回転で一定時間粉砕し,X線回折の底面反射のピークの強度や半値幅の変化や電子顕微鏡による観察のほか,熱分析や赤外線分析などを実施した.
     数時間の粉砕でX線回折ピークは消失して非晶質化したが,それに伴って結晶度(底面反射のピークの半値幅)はセリサイトとサポナイトについて結晶度の低下がみられた.赤外線分析や熱分析からはOHの減少と分子状の水の増加,Si-Oの振動の変化などが確認された.
      以上の結果から粘土鉱物のメカノケミカルな挙動と断層運動との関わりについて考察する.
  • 山田 稜, 岡本 敦, 最首 花恵, 中村 美千彦, 奥村 聡, 佐々木 理, 土屋 範芳
    セッションID: S2-05
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    地殻流体の主要な流路は岩石中のき裂であり,鉱物脈は流体から鉱物が析出してき裂が閉塞することで形成される.しかし,天然の鉱物脈から流体の流動情報(流量,流速,流れ方向)や析出による間隙構造の変化を読み取ることはできていない.  本研究では流通式水熱反応装置により水の状態変化(液相から気相,液相から超臨界状態)を利用してシリカ析出実験を行い,人工的に石英脈を作製した.作製した鉱物脈は非破壊の状態で回収し,X線CTスキャンにより内部間隙構造の解析・評価を行い,シリカ析出物の鉱物種・形状・空間分布の違いについての考察を行った.
  • 東野 文子, 河上 哲生, サティシュ・ クマール, 土屋 範芳, 石川 正弘, ジェフ・ グランサム
    セッションID: S2-06
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    東南極セール・ロンダーネ山地東部に産する泥質片麻岩は、大陸衝突に伴う高温変成作用時(600Ma)のClに富む流体活動を記録しており、その温度圧力条件は約800℃、0.8GPaであった。同試料は、Clに富む流体流入に伴い、LREE、Thが抜け、HREE、Zr、Yが添加されたことを示す微細組織を持つ。同山地中央部に産する変マフィック岩には、主たる面構造を高角で切る、ザクロ石と角閃石から成る小岩脈が貫入する。脈の中心から離れるにつれ、角閃石と黒雲母のCl濃度が下がることから、脈はClに富む流体流入によって形成されたと分かる。この流体流入条件は、壁岩が約690℃、0.9GPa以下の条件であった。Clに富む流体活動は、岩相を問わず、セール・ロンダーネ山地の東西200kmに渡り線状に分布し、変成ピーク期から後退変成期の複数段階にわたって起きているから、大陸衝突帯におけるメジャーな流体活動であろう。
  • 林 謙一郎, 清水 公輔
    セッションID: S2-07
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    フィリピンにはオフィオライト帯が広く分布し、パラワン島南部にはオフィオライトに伴う超塩基性岩が分布している。Rio Tuba 鉱床は蛇紋岩の風化帯に形成されたラテライト型ニッケル鉱床で低品位鉱を産する。本研究ではニッケル鉱石を採掘している露天掘り露頭において、地表より底部まで1 m おきに試料を採取した。試料の粉末エックス線回折、赤外吸収および主成分・微量元素の化学分析を行い、ラテライト化に伴う各種元素の挙動やニッケルの存在状態などを検討した。
  • 村田 雅美, 谷 健一郎, 植松 勝之, 宿野 浩司, 水上 知行, 森下 知晃
    セッションID: S2-08
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    マントル物質中の結晶と結晶の境界(相境界)に、メルトや水に富む流体がどのように、どれだけ存在しているかは、メルトの発生や移動、マントルの物性・化学組成変動に直接的な影響を与えるため重要な情報である。 実験岩石学的、理論的アプローチは多いが、天然物質の観察例はほとんどない。 これまで知られていなかったマントル起源かんらん岩の相境界のナノスケール微細組織に着目し、この組織が、固相–流体反応で相境界に形成された物質であると仮説をたて検証している。この微細組織の相の決定と微量元素分析方法について、ラマン分光分析装置を用いてナノサイズの相解析方法をに活用することを進めている。表面に存在する鉱物とその状態を明らかにし、結晶相境界に分布する特異な組織は何で構成されているか、初生結晶の種類・組み合わせによる違いなどを明らかにし、結晶相境界で起きている反応、流体/メルトの存否と形態などについて検討する。
  • 中村 美千彦, 奥村 聡, 吉田 武義, 高橋 栄一, 佐々木 理
    セッションID: S2-09
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    MT観測から要請される下部地殻・最上部マントルの流体ネットワークの存在を検証するために、捕獲岩のX線CT観察により、空隙構造として保存されている粒間流体の実態(量・形態・分布・メタソマティズムとの関係など)を系統的に調べた。これまでに世界9か所の産地の計約70試料のマントル・下部地殻起源捕獲岩についてX線CT撮影(分解能4~6 μm)を行った。捕獲岩中の空隙はほぼ全ての試料に明瞭に存在し、高温高圧下での組織平衡の特徴を備えることから、地下深部における粒間流体の存在形態を保存していると考えられる。粒間流体は、CTの分解能の範囲では孤立しているものの、試料内で帯状に偏在する場合には、体積分率は5%を超え、連結度も高くなる。これらの観察結果は、粒子スケールで均質な流体ネットワークは存在しない一方で、剪断帯などのスケールでの変形の局在化により、流体の連結性が確保されている可能性を示唆する。
  • 武内 美佑紀, 荒井 章司
    セッションID: S2-P01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    島弧下部地殻における加水作用を議論するため,東北日本弧,一の目潟から得られる下部地殻捕獲岩を調査した。用いた斑れい岩捕獲岩は,斜長石,角閃石,単斜輝石,斜方輝石,スピネル,磁鉄鉱,かんらん石から構成され,ホルンブレンド‐輝石斑れい岩と輝石斑れい岩である。これらの斑れい岩中では,しばしば単斜輝石が角閃石に置換されている様子が見られ,初生的な角閃石のほかに二次的な角閃石が存在する。斑れい岩中の角閃石は,その他の初生的な鉱物よりTiO2やNa2O,K2O含有量が高い。さらに,単斜輝石はRb,Ba,Nbなどインコンパティブル元素はほとんど含まれないが,二次的な角閃石はこれらの元素に富む。メルトまたは流体によりH2Oと共にこれらの元素が付加されて二次的な角閃石を形成したと考えられる。特にLIL元素に富むことから加水作用に関係した流体は島弧マグマに関係したものであると考えられる。
  • 三浦 保範, Gabriel Iancu
    セッションID: S2-P02
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    地球は大気・海水・地殻固体の全圏循環の惑星で、二酸化炭素(低温型)の全圏と局所的循環でほぼ安定的に維持されている(小惑星衝突破壊を除く)。この比較的低温の二酸化炭素の挙動は、大気―海水―地殻(―生命)圏間で物質状態変化して維持されている。その低温の二酸化炭素の挙動として地下基盤岩と水(炭酸水)の例として、欧州Gerolstein (Germany)とBorsec(Romania)おいて、地下の石灰岩体(炭素起源)による反応で低温炭酸水と再結晶方解石が形成されている。一方、地殻内に長期保存された炭素含有物(石炭等)を人工燃焼させ大気中放出して地球温暖化の原因となっている高温二酸化炭素は、人工的な疑似循環系処理が期待されている。
R1:鉱物記載・分析評価
  • 長瀬 敏郎, 門馬 綱一, 栗林 貴弘, 山田 亮一
    セッションID: R1-01
    発行日: 2013年
    公開日: 2018/06/07
    会議録・要旨集 フリー
    玉髄や瑪瑙は非常に微細な石英粒子の集合体であるが,多量のブラジル双晶ラメラを含むことや,モガン石(moganite)との共晶,a軸伸長の結晶形態など,バルクの石英結晶とは異なる様々な特徴を有している。瑪瑙や玉髄についての光学的顕微鏡によるマクロな組織解析,ならびにTEMを用いたナノレベルでの結晶学的な解析は多くの研究が行われているが,これらの両者の結果を結びつける1µm-10nmの間の観察データが不足している。今回の研究では,この観察領域の組織データを補うため,電界放出形走査電子顕微鏡による観察をおこなった。観察の結果,玉髄や瑪瑙の組織は主に3つのタイプに大別される。これら3つのタイプの大きな違いは,ナノサイズの大きさをもつ一次粒子の集合で構成される二次粒子の組織を強く反映している。
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