Crは典型的な難融性元素であり,クロマイトは典型的なマグマ性鉱物である。岩石中の初生クロマイトは熱水環境下でCrを放出し,近くに含Cr熱水鉱物を生成するとされる。これらでは,クロマイトは二次鉱物のCr供給源である。熱水から晶出したと解釈されるクロマイトをオマーン・オフィオライトにおいて発見した。層状ガブロを置換するアノーサイトに富むディオプシダイトは,ほかに,ウバロバイト,クロマイト,緑泥石,チタナイトを含む。ウバロバイトとクロマイトは一部骸晶的で,同心円的で周期的な累帯構造を示す。また,ウバロバイトのCrに富むゾーンのみ自形細粒のクロマイトを包有する。緑泥石が粗粒クロマイトと連晶様を呈する。これらの事実は,クロマイトとウバロバイトが同時に晶出したことを示唆する。Crが比較的高温の熱水に相当量溶け込み移動し,クロマイトを晶出させる。すなわち,熱水性クロマイトが存在する。