超低歪速度条件でのみ形成されるコットレル雰囲気は、塑性変形強度に強い影響を与える事が知られている。本研究の目的は、マントル起源の変形したカンラン岩中のオリビンにおいて、鉄のコットレル雰囲気を有する転位が普遍的な存在かどうかを明らかにする事である。化学組成分析の結果、Alpine typeのカンラン岩においては、転位への鉄の濃集(Fo値として約0.4 % ~0.9 %の増加)が確認できたが、Xenoliths typeのカンラン岩には転位への鉄の濃集は認められなかった。Xenoliths typeのカンラン岩の転位への鉄の非濃集の原因は、微細組織観察の結果から以下の3つの可能性が考えられる。1)高温の静的回復作用に伴い元々存在していたコットレル雰囲気が消失した。2)定常クリープ時より高い付加応力の発生によりコットレル雰囲気が消失した。3)オリビンは上部マントルでコットレル雰囲気を形成しない。