抄録
日高変成帯上部層に産するグラファイトを含むシュードタキライトの形成メカニズムと摩擦溶融時のグラファイトの挙動について顕微ラマン分光・XRD・安定炭素同位体分析・HRTEMを用いて多角的に分析を行った.分析の結果,高温型のシュードタキライトでは非常に軽い炭素同位体比を持つ球状のグラファイトが沈殿していることを発見した.これは,シリケイトメルトに溶けていたCOH流体が再沈殿したことを示唆している.岩石中に含まれる炭素の量は微量であるがシュードタキライトが形成されるような高速すべり領域で層状ケイ酸鉱物の脱水反応と炭質物の熱酸化によって大量の流体が供給されることは断層面での力学的特性を変化させ,地震発生後のCO2などの異常な放出を説明することができるかもしれない.