ジルコンは,U,Th-Pb系の年代測定に頻繁に利用されている。以前よりその結晶内部で閉鎖系が保たれない場合があると指摘されていて,この問題が取り置かれたままであったが,近年の機器分析技術の進歩に伴ってこの事象が再び注目を浴びつつある。そこで,年代測定結果の信頼性を確認する目的で,この事象の検証を開始した。本研究では,既に均質な新原生代の年代値が報告されているジルコンの同位体組成を再調査した。LA-ICP-MSを使用して,均質な組成のコア・リム部分及び組成累帯構造を示す部分をまたいで,合計31ポイントのサブグレイン分析を行なった結果,206Pb/238U年代の組成の違いによる影響は見られなかった。但し,238U-206Pbペアと232Th-208Pbペアについて組成アイソクロンを引いたところ,組成累帯構造をまたいだ二箇所から得た結果がアイソクロンから逸れて不一致なU-Th-Pb分布を示した。