抄録
本研究ではPseudohypersthene(旧:異剥石)と呼ばれる金属光沢のイリデッセンスを放つ斜方輝石の発色原理の解明を試みた.Pseudohyperstheneは(100)面にブッシュフェルト型の単斜輝石の離溶ラメラをもち,ラメラに沿うように無数の厚さ50-150nmの板状イルメナイトが離溶している.このイルメナイトラメラに垂直に反射光を入射すると青色やオレンジ色,緑色などの鮮やかなイリデッセンスが観察された.このイルメナイトラメラのイリデッセンスの顕微分光スペクトル(イルメナイトなどの吸収色を補正)と薄膜干渉モデルのスペクトル(イルメナイトラメラの膜厚と屈折率を使う)を比較したところ,よい一致を示した.イルメナイトラメラのイリデッセンスはラメラの薄膜干渉とイルメナイトの吸収色の合成スペクトルである.特に可視領域では特徴的な干渉スペクトルが見られ,その色彩効果を生み出すと考えられる.