地殻中では流体包有物中の水や間隙中の水など,液相や気相の状態の水が存在している.プレートの沈み込み帯や地震発生帯もこのような水が存在する環境であり,この水は亜臨界-超臨界状態で存在している.またこの水は鉱物粒界などに非常に薄い薄膜状で存在している可能性があり,鉱物界面の影響で水分子がバルクの水(自由水)とは違った状態になることが知られている.本研究では石英表面上の薄膜水の性質を,赤外分光観察と古典分子動力学(MD)計算を用いて明らかにしていく.
赤外分光観察では,高温高圧の薄膜水が観察可能なダイヤモンドセルを用いて,金属反射板上および石英基板上の,厚さ1 μm以下の水の測定を行った.ここでは3400cm-1付近に現れる水分子のOH伸縮振動ピークの形状から水の構造化について考察していく.
またMD計算では石英表面での水の構造・物性を調べ,赤外分光測定との比較を試みる.