抄録
久喜鉱山は石英斑岩を母岩とした鉱脈鉱床で,主要鉱石鉱物は黄鉄鉱,方鉛鉱,閃亜鉛鉱,硫砒鉄鉱,黄銅鉱である.黄鉄鉱は3期の晶出時期に区分される.As↔S置換による組成累帯構造を持つ.硫砒鉄鉱には2期の晶出時期が識別され,(Sb,Co)↔As置換による組成累帯構造を持つ.閃亜鉛鉱は黄銅鉱の離溶が顕著なドメインを粗粒の黄銅鉱粒子を含む閃亜鉛鉱が埋める.黄銅鉱は閃亜鉛鉱中に離溶して産出するほか,他の鉱石鉱物の粒間に産出する.方鉛鉱は黄鉄鉱などの粒間や周囲に産出する.銀鉱物は1)黄鉄鉱1に包有される自然銀と濃紅銀鉱; 2)黄鉄鉱の孔及びその周辺に分布する輝銀鉱と鉱染状自然銀粒子; 3)閃亜鉛鉱の孔に生成する自然銀,として産出する.前期鉱化期では黄鉄鉱1→1)の銀鉱物→黄鉄鉱2+硫砒鉄鉱→黄鉄鉱3+硫砒鉄鉱2,と晶出し,後期鉱化期では閃亜鉛鉱→黄銅鉱→方鉛鉱→)2および3)の銀鉱物,と晶出した.