NaClのB1相は、代表的な圧力標準物質の一つであり、状態方程式の構築に資する様々な実験が行われてきたが、5 GPaまでの断熱線を求める実験(Boehler, 1981)については、準調和近似の状態方程式では、高温データを説明できなかった。真性非調和は、準調和近似よりも高温下でのγを小さくする方向に影響するので、実験値の再現性が向上する可能性があったため、真性非調和モデルによる計算を行った。今回の真性非調和モデルによる実験値の再現は、準調和近似よりも若干良好であったものの劇的な改善は見いだされなかった。この結果は、真性非調和の影響が、わずかの体積減少で急速に消滅することと関係している。