地球からの熱放出率を支配する要因の一つは、厚い大陸地殻の存在であり、その役割の評価のために大陸下リソスフェアーアセノスフェア境界(LAB)の熱流束が、表面熱流量測定から推定されてきた。しかし、地殻物質の高発熱量と放射性元素の地殻内分布の不確定性から地表熱流量測定単独での 制約には限界があり、マントル物質から化学平衡を仮定して得た温度圧力値と定常熱輸送を前提として制約されてきた。本研究では、LABの熱流束をリソスフェア下部のマントルかんらん岩を用い、これまでの ような仮定を置くことをせずに推定し、アセノスフェアの熱イベントを検出を試みる。先行研究が多くなされているモロッコの中アトラス山脈に分布するアルカリ玄武岩中のスピネルレルゾライト捕獲岩を研究対象とし、リソスフェア下部の熱構造とその時間 変化を鉱物化学組成の不均質性から推定することで、アセノスフェアの熱イベントの検出に成功した。