栃木県宇都宮地域には中新世火山岩類が広く分布し,下位の風見山田層は安山岩質の陸上火山活動に由来し,上位の大谷層は流紋岩質の水中火山活動である.両火山岩の放射年代から本地域では15 Maに火山活動の変遷が認められ,日本海拡大との関連が示唆されるため,本地域のマグマの成因を明らかにすることは重要である.
一方,宇都宮周辺の鹿沼,茂木地域にも中新世火山岩類が分布しており,これらは下位の苦鉄質岩と,上位の珪長質岩が認められ,宇都宮との共通点が多い.3地域の苦鉄質火山岩について全岩化学組成を比較すると,ハーカー図では主成分が類似した組成を示し,1つのトレンドを形成する.このことから3地域の苦鉄質火山岩は類似の起源物質から生成され,結晶分化作用によって形成された可能性が示唆される.ただし,鹿沼や茂木地域の火山岩は微量元素の分析値が少ないため,今回新たに分析を行い,その結果を加えて岩石学的な考察を行う.