抄録
Finero金雲母カンラン岩体は,古生代から中生代にかけてマントルウェッジでスラブ脱水による交代作用を受けたことが報告されている。この流体がカンラン岩の塑性変形に与える影響に着目した。一部の試料は以下のような特徴がみられることから,含水下で応力集中がおこっていることが確認できた.1)オリビンのポーフィロクラストは複雑な波動消光を示す。2)流体包有物が大量に存在する。変形の疎過程を、走査型電子顕微鏡(SEM/EBSD)を用いたオリビンのすべり系の決定及び,流体包有物の希ガス同位体測定による流体の起源の推測から考察した.この結果,オリビンのすべり系は無水から含水条件を示すすべり系に上書きされている様子が確認でき,流体包有物の希ガス同位体比は,大気,大陸地殻,MORBマントル成分の三成分混合型を示した.剪断帯中のオリビンの塑性変形と脆性変形には流体が関与していたこと示唆している.