抄録
ネパール東部ダンクッタ地域のMCT下盤側に分布する泥質片岩中の、電気石の組成変化を調べた。通常の泥質片麻岩中の電気石リムの組成は、変成度が上昇するにつれ、Mg/(Mg+Fe2+)[=XMg]、Ca/(Ca+Na)が高くなり、Xサイトの空隙が減少する。一方、藍晶石帯に産する電気石脈中の電気石の組成は、脈からの距離に応じて変化し、脈中の電気石は高いXサイトの空隙を有し、XMgがほぼ一定であるが、脈から数cm離れた箇所の電気石は、低いXサイトの空隙を有し、XMgもばらつく。この組成差は電気石形成時の流体/岩石比の違いを反映し、流体/岩石比が高い状態で形成された電気石は、高いXサイトの空隙を有する可能性がある。電気石を大量に産する泥質片岩中の電気石のなかにも、同様の組成的特徴を有するものがあり、これらも変成同時の流体流入に伴って形成された可能性が高い。