伊豆半島周辺に存在する蛇紋岩体は,古第三紀~新第三紀頃に形成された日本で最も新しいオフィオライト岩類であると考えられ,伊豆半島周辺の形成史を解明する鍵として重要視さてきた。本研究では千葉県房総半島嶺岡帯に産する蛇紋岩について,研究例の少ない蛇紋岩の仮晶組織の観察を行った。現地にて採集した蛇紋岩試料について,偏光顕微鏡観察,X線回折分析,SEM-EDS分析を行った。蛇紋岩はいづれも蛇紋岩化作用を受けており,偏光顕微鏡下で網目状組織,バスタイトが主として観察された。多くの試料にニッケル硫化鉱物が含まれており,アワルワ鉱,自然銅も少量確認された。ニッケル硫化鉱物は(Ni+Fe)/S比の値が0.78~1.82 の間を変化し,少量のFeが含有されており,Co, Cuを含むものも確認された。蛇紋岩化が完全な網目状組織では,コアは褐色,緑色,黒色を示し,Feが選択的に濃集する特徴があった。