抄録
結晶の熟成過程における構造規制の効果を明らかにするために、バライト中にセレン酸・亜セレン酸をそれぞれ添加した系にて実験を行い、時間経過や沈殿速度の変化に伴うバライトへのセレンの分配を、バライト中のセレンの化学種と局所構造、分配係数、バラ イト結晶化度の観点からそれぞれ明らかにした。結果、時間経過に伴うバライト結晶化度の上昇により、置換される硫酸イオンと構造的に類似したセレン酸はより安定な構造で取り込まれていくのに対し、構造的に異なる亜セレン酸はバライト結晶化度が上昇しても不安定なままで存在することが示唆された。そのため結晶成長過程において、初めはバリウムイオンと化学的に親和性が高い亜セレン酸がバライト表面に吸着されるが、バライト結晶成長に伴い、置換される硫酸イオンと配位構造が異なる亜セレン酸は溶液中に放出され、構造的に類似したセレン酸が相対的に多く取り込まれることが明らかになった。