抄録
三宅島火山において最も未分化な噴出物のひとつである大船戸期スコリアを用い、マグマ溜まりの条件を決定するために高温高圧含水融解実験を行った。 また、大船戸スコリアの噴火過程におけるタイムスケールの理解のために斑晶ゾーニングプロファイルの解析を行った。 大船戸期スコリアの斑晶はかんらん石と斜長石であり、すべて正累帯構造を持つ。大船戸スコリアの斑晶組み合わせ、組成を再現した条件は、圧力がおよそ150MPa、温度がおよそ1100°C、メルト中の含水量がおよそ3wt.%であった。 斑晶リムはおよそ30-50μmの厚さである。斑晶リム組成は、石基の微斑晶組成と近い組成を持つ。マグマが噴火前にマグマ溜まりから浅所に上昇し、脱ガスすることでこのリムが成長したとする。かんらん石のゾーニングプロファイルが拡散によりなまされたと仮定して浅所での滞留時間を求めると、数日から十数日という時間が見積もられた。