Stevns Klint K-T境界粘土層中のCr, Mn, Fe, NiのXAFS解析を行った。測定は高エネルギー加速器研究機構(筑波,日本)PF、BL-9Cビームラインで行った。XANESおよびEXAFS解析より、K−T境界層中のCr, Fe, Niの局所構造はそれぞれCr2O3, FeOOH, Ni(OH)2と鑑定できた。隕石衝突時、テクタイトガラスや粉塵に含まれていたこれらの元素は、堆積後に地球表層で風化と続成作用を受けて、ガラス質から安定した水酸化物、酸化物に変化している。しかし、同じ鉄属であるMnは二価であり、MnCO3の局所構造を有していた。これまで、Mnの異常濃集が他の鉄属と異なり認められていなかったのは、Mnが炭酸塩固溶体、あるいは生命の必須元素として生命活動により、拡散したことで解釈できることを明らかにした。