抄録
圧力溶解変形は割れ目や断層ガウジの間隙率を減少させ、浸透率の減少・流体圧の増加、ひいては断層の摩擦強度低下につながる。粒間に存在する水を介した物質輸送(拡散)によって圧力溶解変形は進行するため、粒間水における拡散特性の知見は重要である。本研究は分子動力学(MD)計算を用いて、石英粒間水中の溶存SiO2の拡散係数を評価した。
溶存SiO2の拡散係数は粒間水の厚さに依存し、厚さが0.5 nmのとき、表面のない自由水中と比べて最大で一桁程度小さくなることが分かった。粒間水中の拡散係数の温度依存性は、自由水中とほぼ同じであった。得られた拡散係数を用いて、圧力溶解による砂岩の間隙率・浸透率の時間変化を計算し、圧力溶解を受けた天然の砂岩(北海、ジュラ紀)の測定値と比較した。計算した浸透率は、測定値とおおまかに一致し、得られた拡散係数によって地殻における圧力溶解変形とそれに伴う間隙率や浸透率の変化を予測できる可能性が示唆された。