在、日本における既存の地熱開発は岩石が脆性的な挙動をする領域で行われている。さらに大きなエネルギーを得るため、本研究では岩石が延性的な挙動をする領域を対象とする。既往の研究から深部地熱資源は静岩圧下で存在すると考えられており、深部地熱開発に向けて静岩圧-静水圧境界のより詳細な知見を得ることが求められている。研究対象地域は秋田県中央部田沢湖複合岩体の東部に位置する大水端・小水端・小波内花崗岩体であり、先新第三紀の花崗閃緑岩からなる基盤岩と、これを被覆している新第三紀の安山岩及び凝灰岩からなる。野外調査の結果、安山岩との境界部の花崗岩類は珪化しており、その境界部分には斑岩がみられた。また、珪化に伴うCu-Moなどの鉱化作用も見受けられた。このほか、数種類の石英脈やガラス質脈、熱水角礫岩脈が存在しており、流体包有物試験によってバイモーダルな均質化温度が得られた。加えて、地質温度圧力計により各鉱物脈が形成したPT 条件を求め、各鉱物脈が形成したプロセスと静岩圧-静水圧遷移を対比し、深部地熱資源の形成モデルを提示する。