抄録
地殻においてき裂は流路として機能し、熱やエネルギーの移動に大きな影響を与えている。シリカ溶解度の変化は溶解・析出プロセスを支配し、き裂透水率変化において大きな役割を果たしている。しかし封圧存在下でのき裂内部における溶解・析出プロセスは研究例が少なく、不明点が多い。本研究では、新造の流通式水熱反応装置を用いた溶解・析出実験を行った。花崗岩に発生させた引張き裂に純水またはシリカの過飽和溶液を流通させ、高温高圧条件における鉱物の溶解や析出による透水率やき裂構造の時間変化を分析した。溶解実験では、1.室温での封圧下流通実験, 2.350℃での無流通実験, 3.350℃での流通実験 の3つの段階に分けて実験を行った。1、2では、透水率の連続的な減少が見られた。これはき裂導入時に発生したガウジ(花崗岩の粉)が、封圧により圧密された。3においては、ガウジ部分で激しい溶解がおき高速流路を形成していた。析出実験の結果、き裂内部にシリカが析出し、ごく短時間に透水率が大きく下がる様子が見られた。析出はき裂全体で発生し、封圧による透水率減少よりも遥かに強く透水率に影響していた。