抄録
桜島大正噴火の軽石と火砕成溶岩中に,はしご状(ladder type)の組織をもった磁硫鉄鉱(Po)の酸化分解生成物(magnetite,Mt;hematite,Hm)を見出した.この組織はPoの加熱実験でも観察され(Thornhill and Pidgeon, 1957),Po-気体間の反応を示唆する.先行研究(e.g., Dunn and Chamberlain 1991)からladder type酸化組織の形成メカニズムを推定した:(1)Poが気体O2と反応しMtと気体SO2を生成(2) SO2はPoの結晶構造に沿って空隙を形成(2’)MtはO2と反応しHm生成.(2)において,大気のような気体O2存在環境下では,空隙を通してSO2排出と気体O2の供給が瞬時に行えるので,Po-Mt境界の表面反応律速過程となり,反応開始点から瞬時にMtが生成する.これは,大気接触を経験している両噴出物にladder typeの酸化組織が見られたことと整合的である.Poのladder type酸化組織は噴出物の大気接触の有無を判定する指標となるため,破砕マグマへの大気の混合過程の理解に繋がる.