抄録
伊豆―小笠原―マリアナ弧形成前のフィリピン海~西太平洋下には,中央海嶺玄武岩のソースマントル(DMM)的なレールゾライトと高枯渇ハルツバージャイトからなる不均質なマントルがあった。52 Maに始まった太平洋プレートの沈み込みによって,深さ100 kmから不均質なマントルアセノスフェアが上昇し,DMM的なマントルは減圧溶融して中央海嶺玄武岩的なマグマ(原島弧玄武岩)を生じた。しかし高融点のハルツバージャイト塊は溶融することなく,高温のまま上昇した。沈み込み開始から400万年経って,原島弧玄武岩の融け残りマントルはスラブ流体の付加により再溶融して低シリカ無人岩マグマを生じ,高枯渇ハルツバージャイトの溶融で高シリカ無人岩を生じた。高シリカ無人岩と低シリカ無人岩,すなわち原島弧玄武岩が異なるソースマントルに由来することはPb-Hf-Nd同位体モデル計算によって支持される。また,Yb-Os同位体モデルは高シリカ無人岩及び原島弧玄武岩のソースマントルは,未分化マントルがそれぞれ1.5ー1.7 Gaに18ー30 wt%,3.6ー3.1 Gaに3.5ー4 wt%融解した融け残り岩であることを示す。