抄録
島弧の成長と海底カルデラの生成に関しては次のようなシナリオを描く。始新世から漸新世の伊豆弧の詳細な火山分布などはわからないが、地殻は現在と比較して明瞭に薄かった(厚さ10-20 km)。よって、上部マントルの融解による島弧マグマも安山岩を主体とするものであった(Tamura et al., 2016)。四国海盆の拡大以降、火山フロントの活動が再開したが、現在の小笠原弧のように地殻が薄かったと考えると、Tamura et al. (2016)で示されたように、噴出するマグマは安山岩を主体とするものであり、さらに中部地殻の成長にも大きな役割を果たしたに違いない。地殻が成長していくと、マントル上部が高圧になり、玄武岩マグマしか生成できなくなる。さらに重要なことは、この伊豆弧成長の後期に生成された玄武岩マグマは、地殻の薄いときに形成された安山岩質の中部地殻を選択的に融解し、海底カルデラ生成の原因となる。