抄録
水やメタンは天王星や海王星などの巨大氷惑星の主要な構成成分である.メタンの高温高圧挙動は,その分子解離により起こるダイヤモンドの生成とも相まって,惑星科学的のみならず物質科学的にも注目され,多くの先行研究が行われている(e.g. Hirai et al., 2009).しかしながら,水-メタン混合系でのダイヤモンドをはじめとする高温高圧生成物の生成条件や安定性に関する実験的研究は,氷惑星の内部構造を推定する上で重要であるにも関わらず,ほとんど行われていない.そこで本研究は,氷惑星内部条件下における水-メタン混合系での高温高圧生成物とその安定性,特にダイヤモンドの生成条件の解明を目的とし,放射光を用いたX線回折とラマン分光を行った.実験の結果,C-H-O系でのメタン分子の解離によるダイヤモンドの生成は,2-90 GPaの圧力領域において1500 K以上で起こることが明らかとなった.本研究の結果は,氷惑星内部においてメタン分子の解離によるダイヤモンドの生成が氷マントルの最上部でも起こる可能性を示唆している.