抄録
滋賀県田上山では主に一方向に成長する水晶が見られるが、稀に両方向に成長した両錐型水晶がる。
本研究は田上山産水晶の成長過程をより詳細に考察することを目的として、 (A) 晶洞から直接採取した試料、(B) 破断面がr面又はz面と平行に近く、両錐型のもの、(C) 破断面がc軸と垂直に近く、錐群が観察できる試料、(D) 破断面がc軸と平行に近い試料、の4種を比較してカソードルミネッセンス法で観察を行った。
観察の結果、 (B)は破断後に複数の錐面を形成した痕跡なく破断面が成長により修復されているのに対し、(C)、(D)は破断面を修復する際に、複数の錐面を形成し、それらが成長とともに統合された痕跡が観察できた。
本研究の結果から、破断面の方向に従い、破断面の修復速度が異なることが考えられる。