抄録
Akizuki et al. (2001)のマダガスカル産電気石試料について、c{0001}セクター及びo{02-21}セクターの単結晶X線回折実験と結晶構造解析を行った。oセクターでは、六方格子において等価な3本のa軸のうち1本が他の2本と比べて短い。一方、cセクターでは3本の長さに有意な差はなかった。構造解析の結果、cセクターでは、R1モデルでの精密化で得られたY1,Y2,Y3席の占有率は3つともほぼ等しく、空間群R3mの三方晶系と考えられる。一方、oセクターではR1モデルでの精密化において、Y席でAlとLiの秩序化が観察された。3つのY席の占有率の違いによりY1-Y3距離が縮められるが、これによって縮む方向は短い軸の方向と一致する。この方向は3つのY席のうち1つだけ占有率が異なるY2席を通る鏡面に垂直である。この関係はShtukenberg et al. (2007)の報告と同様である。占有率の異なるY席を通る鏡面と垂直の関係にある軸長が短くなることは、産地の違いに関わらずY席でLiとAlの秩序化が観察される電気石に共通する事象であると考えられる。