抄録
ラッセル鉱の構造はWO6層とBi2O2層の交互の積層である. この構造を塩酸処理前後で比較すると、塩酸処理により積層方向へ格子が縮小し, 積層方向に対するWO6八面体の傾きと積層方向に垂直なWの変位が緩和されていた. 赤外吸収スペクトルは, WO6八面体内部で対角酸素距離を維持しつつ結合O-W-Oが直線に近づくことを示唆しており, X線構造解析で得られたWの変位の緩和と調和的である. また, 赤外吸収スペクトルで観測された水分子に由来すると思われる強い吸収は結晶表面における吸着サイトの存在を示唆する.