抄録
新たにKaidun隕石中の水質変成を受けたEコンドライト岩片を含む2つの試料(EH, EL)について観察、分析を行い、またEコンドライトの水熱変成実験を行った。2つの試料には共にFe-Ni金属と斜長石の変質物が存在しており、Eコンドライト岩片とCコンドライト物質の境界部には細長い炭酸カルシウムが存在していた。このような特徴はKaidun #40.7.1のEコンドライトの水質変成とよく似ており、同様の変成過程を経験した可能性がある。Eコンドライトの水熱変成実験はEL5を用い、HCl溶液、H2O溶液、NaCl溶液、NaOH溶液と反応させた。HCl溶液ではFe-Ni金属とトロイライトが消失、H2O、NaCl溶液ではEPMA収量が低く、組成にばらつきのある赤茶色の物質が析出、NaOH溶液では主にSiO2の白色の物質が析出していた。これらの結果からKaidun中のEコンドライト岩片の水質変成環境は酸性下ではなかったことが示唆された。