抄録
結晶質岩内部における過去の流体の化学的特性を復元するためには,流体の化学的特性を記録しつつ形成された変質鉱物を研究対象とすることが有効となる。そこで本研究は,中部日本の土岐花崗岩体中に認められる斜長石の熱水変質プロセスを,斜長石中の微小孔の役割,物質移動,反応速度の観点から論じ,斜長石の変質をもたらす熱水の化学的特徴の変遷について言及した。斜長石の変質はアルバイト化,カリ長石化,およびイライトの形成により特徴づけられる。本研究では,1)変質領域と非変質領域の微小孔の分布特性の相違,2)反応式の構築による斜長石変質に伴う流入・流出成分の解明,3)イライトK-Arの年代決定に基づく,変質年代・温度条件の推定,および4)斜長石の変質をもたらす年代・温度条件における熱水の化学的特徴の時間的な推移について論じた.