抄録
アメリカ合衆国ユタ州アイアン郡に産するⅠ型天然磁石について,EPMAによる化学分析,SQUID磁束計を用いた磁化測定,分析電子顕微鏡による微細組織の観察を行った。磁鉄鉱中の不純物元素としてSi, Mg,Al,Caが挙げられ,低倍率の反射電子像ではSi成分の多寡による累帯構造が認められるが,高倍率では1ミクロン以下のケイ酸塩鉱物粒子が磁鉄鉱中に多数含まれていることが確認できる。さらにTEM像ではホストの磁鉄鉱とSi含有磁鉄鉱との連晶組織が観察された。EDSによる組成分析から,ホストの磁鉄鉱にはSiがほとんど含まれていないことがわかった。また,Si含有磁鉄鉱の組成はXuら(2014)によって提案された[□0.5Fe3+Fe2+0.5]VISiIVO4が妥当であると考えられる。今回の結果はこれまでの定説であった“低温酸化による磁赤鉄鉱化”とは整合しない。よってⅠ型天然磁石についての低温酸化説は再検討すべきであると考えられる。