抄録
天草陶石を原料として磁器を製造するときに、トリディマイトを添加すると強度が増加する。強度増加はトリディマイトの熱膨張に因る現象であるが、焼成過程の素地中での反応関係はわかっていない。その理由は一般的なSEM/EDSを用いた観察では、トリディマイトと石英との判別ができないためである。SEM観察下で粒子の結晶構造を知る方法としてEBSD法が用いられており、本法を強化磁器に適用した結果、両者を明瞭に判別することができた。1400℃で合成したトリディマイトを粉砕・分級して45~20μmの粒子を作製した。天草陶土にトリディマイトを約20%添加して湿式混合し試験板を作製し、ガス窯でSK10番・還元焼成を行った。試験板から研磨薄片を作製した。EBSD分析にはFE-SEMに付属するEBSD検出器と分析ソフトウエアを用いた。解析では石英とトリディマイト(高温型)の結晶構造を用いた。解析後に得られた「EBSDバンドコントラスト像」と「EBSD結晶相像」によって、トリディマイトと石英を明瞭に判別することができた。また、「逆極点図結晶方位図」からトリディマイト粒子はさらに細かい結晶集合体であることがわかった。