抄録
通常学級の授業において,子どもが主体的に漢字学習を行うための「屋台」型学習の場を設定し,これが漢字書字の学習方略選択に及ぼす影響と漢字書字テストの正答率への効果について検討した。全体的に視覚方略の使用頻度が高く,エピソード方略,聴覚方略の順であった。「屋台」型学習を行った漢字の正答率は100%(中央値)になるとともに,「屋台」型学習を行わなかった漢字の正答率も上昇した。漢字の画数とポストテストの正答率との関係をみると,画数が少ない漢字ほど正答率が高い傾向が認められたが,画数と比較して正答率の低い漢字もあった。漢字別の正答率では,プレテストで正答率が低かった文字ほど,ポストテストでの伸び率が高かった。以上から,通常学級の授業で子ども自身が学習方略を選択できる学習の場を提供することは,漢字書字の習得に効果的である可能性が示唆された。