抄録
本研究の目的は,高等学校教員が,ディスレクシア生徒に合理的配慮を提供する際に抱く負担感を明らかにし,負担感なく支援するための方策を考察することである。そのためA県の全県立高校151校に郵送法による個別質問紙調査を実施し,110校868名から回答を得た。分析の結果,教員の負担感は考査,授業,教材の多次元からなることが明らかになった。さらに,各負担感に関連する個人要因をχ²検定により検討した。考査では教科が有意傾向で実技系教科に負担感の軽い者が多いことが示された。授業では,研修受講歴に有意差が認められ,有群に軽く無群に重く感じる者が多かった。教材では,教科・体制・配慮実績に有意差が認められ,教科では実技系に軽く理系に重く,体制整備群に軽く不備群に重く,実績有群に軽く無群に重く感じる者が多かった。これを踏まえ負担感低減には,研修内容の見直しや教材の共同制作・アーカイブ化等の方策が提案できる。