抄録
本研究では,漢字書字困難児31名にRey-Osterrieth複雑図形検査を行い,Boston Qualitative Scoring Systemで評価することで,漢字書字困難児の視覚認知特性と年齢による違いを検討した。Nakano et al.(2006)に従い,8~9歳・10~11歳・12~14歳の3群に分け,定型発達児データと比較した。その結果,8~9歳群は模写時の情報の量と正確性(CPA)と組織構成(ORG)が,10~11歳群ではORGが定型発達児より低かった。一方,12~14歳群ではいずれも定型発達児との間に差を認めなかった。また,CPA・ORGと記憶保持との関連を検討した結果,CPAとORGは遅延再生時の情報量と正確性を予測していた。以上より,漢字書字困難児の書字定着不良には,まとまりの捉えと構成方略の低さが関わるが,年齢とともに発達し12歳以降で定型発達児に追いつく可能性がある。