景観生態学
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原著
湘南海岸東町地区への海流散布による種子の供給源の推定
岡 浩平大熊 麻実子吉崎 真司
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2009 年 13 巻 1_2 号 p. 45-54

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抄録

神奈川県湘南海岸の東町地区は,汀線の伸張および海浜植物群落の面積の拡大が認められており,今後,海浜植物の重要な生育環境になることが期待される.そこで,東町への種子の供給源となりうる範囲を明らかにするために,海流散布による種子の移動距離と漂着種子・地上植生の種組成について調査を行った.種子の移動距離の把握は,ツルナ種子を5地点から放流することによって調べた.漂着種子の種組成は,東町への漂着物に含まれる漂着種子から把握した.その結果,東町周辺で種の豊かな海浜植物群落が残存する“こゆるぎの浜”および“辻堂西海岸”からの放流では,種子の移動距離が短かった.そのため,この2地点からは,短期間しか海流散布ができない種の東町への供給は困難であると推測された.一方,花水川河口から放流した場合は種子の移動距離が最大1180 mであり,他の地点と比べて長距離移動していることが確認された.そのため,花水川河口周辺の海浜からは,短期間しか海流散布できない種も東町への供給が可能であると推測された.このことから,東町への種子の供給源となりえる海浜は,各海浜植物の種子の浮遊能力によって異なると考えられた.また東町への漂着種子は56種が確認され,そのうち海浜植物はハマヒルガオやコウボウムギなど5種が確認された.これらの5種は長期間の海流散布が可能であり,さらに地上植生にも確認された.このことから,周辺からの海流散布による種子の供給が東町の海浜植物群落の形成に貢献していると考えられた.

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© 2009 日本景観生態学会
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