抄録
暖温帯の山地河畔域を対象に,ハルニレとハナガガシを指標として自然林再生優先度を段階的に決定する手法を提示した.優先度決定の第一段階では,樹種特性の異なる2樹種の潜在的分布域を微地形および土地被覆から推定することで,潜在的な共存場所およびそれぞれのハビタットを抽出した.第2段階では指標種2種の潜在的なハビタット適性が高く,かつ現状での個体群の劣化の度合いが大きな場所を抽出することで,対象河畔域の中で河畔林の再生の必要度が高い場所を選定した.第3段階では,種子散布が個体群維持・拡大の制約となるハナガガシについて種子源を考慮した再生優先場所を抽出し,自然のハビタットの分布が著しく制約されるハルニレについては調査地全体でのハビタットの連続性を重視した修復優先区間を抽出した.このような手法を用いることにより,具体的な再生手法を考慮した再生優先場所の設定が可能であり,また河畔林のどのような機能を優先するかといった再生目的の検討においても有効な、包括的支援情報を提供できると考えられた.